ⓒ川崎悟司
ⓒ川崎悟司

 オルドビス紀(き)が終わってシルル紀に入ると、地球は暖(あたた)かくなりました。オルドビス紀末の大量絶滅(ぜつめつ)を乗り越(こ)えた海の生き物は、どんどん種類を増(ふ)やしていきました。

 この時代、力をつけてきたのがウミサソリです。その名の通り、海に暮(く)らすサソリの仲間です。ミクソプテルスや全長2メートルにもなるプテリゴトゥスの仲間など、大きなハサミをふるって海の王者として君臨(くんりん)しました。

 一方、まだ目立たなかったのが魚たちです。それまでの魚はあごがなく、現代(げんだい)の魚とはだいぶちがう姿(すがた)をしていました。あごがないので口を閉(と)じることができず、口を開けたままプランクトンを吸(す)いこんでいたと考えられています。それでも、頭にかたいよろいを持つ魚が増えるなど、簡単(かんたん)には食べられないように進化しつつありました。

 そして、シルル紀の前期になると、ついにあごを持つ魚が登場します。あごは、えらを支(ささ)える軟骨(なんこつ)の一部が変化してできたと考えられています。あごのおかげで、口でさまざまなえものをつかまえたり、かみくだいたりできるようになりました。

 今まで食べられてばかりだった魚が、食べる側に変わっていったのです。それまでは数センチ~30センチほどの大きさでしたが、2メートルにもなる魚も現(あらわ)れました。

 あごは、のちにカエルなどの両生類、トカゲや恐竜(きょうりゅう)などの爬虫(はちゅう)類、鳥や人間などの哺乳(ほにゅう)類へと受けつがれていきます。そして、あごを持つ生き物が海や陸の主役となっていくのです。あごを手に入れたことは、背骨(せぼね)を持つ「せきつい動物」の運命を大きく変える、進化の大事件(じけん)だったのです。(科学童話作家)