岡崎慎司×兵庫 サッカーでまちおこし
サッカーのスペイン1部リーグに昇格したウエスカのFW岡崎慎司(34)=兵庫県宝塚市出身=が、11日(日本時間12日)のシーズン開幕を前に神戸新聞社のインタビューに応じた。名門レアル・マドリードからビリャレアルに期限付きで加入した久保建英とは、13日(日本時間14日)の初戦でいきなり直接対決が実現。日本が注目する一戦に「きた!」と高ぶり、「勢いをぶつける」と宣言した。情熱の国で、侍ストライカーの新たな挑戦が始まる。(山本哲志、有島弘記)
-開幕が迫る。
「個人的には調子もいいし、チームも練習試合ですけど1部のチーム相手に通用している部分がある。やってきたことをどれだけやれるか」
-練習試合ではダイビングヘッドも決めた。
「ゴールを決められているのもそうだし、チームの選手も見てくれている。(昨季の)最初の頃に比べたら全然、自分とチームの息は合ってる。2部でチームの軸としてプレーできたことが大きかったなと。今季はスタートから全開で何の迷いもなくできる状態。そこが一番大きい」
-初戦は久保建英が所属するビリャレアルとの日本人対決。
「1発目に日本人対決はあるかな、と思ってたんで『きた』と。強いチームだけど、相手は監督も変わってこれからという感じ。自分たちは今までの勢いでいける」
-今季の目標は。
「ゴールを2桁取ってチームも残留できれば、それが望む最高のシナリオ。初めて1部に上がった2年前はすぐ落ちたので、ウエスカの歴史に残ればいいかな」
-世界的名門のレアル・マドリードやバルセロナとも対戦する。
「楽しみですね。それが一つのこのリーグに来た意味なんで。自分は(国内)リーグが一番重要だと思っている。チャンピオンズリーグに出て上に行くことも一つの夢だと思うけど、質の高いリーグでどれだけ証明できるかが、選手としての基準だと思っている。リーグで活躍できなかったら安定した評価は得られない」
「子どもの頃からレアルやバルサだけでなく、バレンシアやビリャレアル、セビリアといった強いチームを見てきた特別なリーグ。その中で活躍して『岡崎、スペインでやれるんや』と回りに見せたい。今回は自分でつかみ取ったもの。失うものはないし、全力でぶち当たりにいけばいい。昨季やってきたことが1部で通用するのか試したい。今回はとにかく挑戦。僕が得意なジャンルなんで。年齢ももちろんあるけど逆に見返すチャンス」
-ドイツ、イングランドに続く欧州で3カ国目の1部リーグ。気持ちに違いは?
「気持ちは基本的に変わらない。一年一年リセットする。いいことがあってもシーズンを終えればフラットに見て、次の目標を一から立てる。『去年はこういうことがあったから今年はこれを目標にしよう』と、材料にしてやってきた」
「ただ変わったことがあるとしたら、初めてカテゴリーを2部に下げてスペインでやろうと決め、昇格して初めての1部という意味ではワクワクしている。2部が悪いわけではないが、周りから見たら『2部でしょ』(と思われる)。やっとスタートラインに立てた」
-昨季は、優勝も経験したイングランドのレスターからスペイン2部のマラガを経てのウエスカ入りだった。
「レスターの最後の年はあまり試合に出られず(評価)材料がなく、スペイン1部のどこからもオファーがなかった悔しさがある。でも、海外がいいのは結果を出せば見返せるチャンスがあるということ。『あの時取っておけば』と(思わせる)。そういうのがないとモチベーションは持たない」
-プロ入り当時、今の姿は想像できたか。
「もちろん想像はしていないが、だからといって『すげー、ここにいる』とは一回もなったことはない。『ここまで来たからもういいや』とはならない。結局その時の現実を受け止めて、むしろ当時どう思ったかは忘れている。毎回リセットして目標を決めるので、目標を見失うことがない。たまに振り返って『ようここまで来たな』とは思いますけど(笑)」
-向上心を持ち続ける秘訣(ひけつ)は。
「明日練習があるなら、『きょうはこいつに負けた。明日は勝ったろう』というマインドを毎日繰り返している。だから環境を選ぶ時はいつも厳しい方を選ぶ。自分に甘いからこそ環境は厳しく。常にハングリーでいられる。日本にいたら経験があるから若いチームメートも気を使うだろうけど、海外にいると年齢は関係ない。18歳、19歳のやつが『次は頑張ろうぜ』とか『気にするな』とか言うわけですよ(笑)。『いや、ほっとけや』という感じですけど、変な気遣いがない。単純にサッカー選手として上を目指せる」
「今は日本のリーグに戻ってどうとか、そこは考えていなくて。ただ全力でやれる環境を求めている。この次はイタリアの1部リーグに行ってプレーするとか、違うチャレンジをすると思う」
-コロナ禍では異国の地でサッカーを奪われた。ベテラン選手として焦りは無かったのか。
「焦りというのではなかった。自分は『いつ終わってもいい』と思ってサッカーをやっている。やめたくはないけれど、何かが起きてそういう状況になったとき『悔いを残したか』と言われたら悔いは残ってないんで」
「ただ、サッカー選手でなくなれば練習をしなくていいけど、試合がいつか始まるという状況ではモチベーションが無かったとしても肺は動かしておかないといけない」
-外出制限中は、自宅での日々のトレーニング動画を公開した。
「僕らはサッカーを我慢すればいいけど、飲食店の人やいろんな職業の人が大変な思いをしている。スペインと日本のギャップもあるし、自分が何か伝えるのも難しい面があった。だから何も言わずとにかく動画を上げて、見てくれた誰かのためになったらいいなと」
「(試合という)目標を失っている中、毎日動画を上げるということが自分にとっても必要だった。みんなのためと言いつつ自分のため。最後の方は限界を迎えてましたけど(笑)。ようやく再開したときは『やっぱりこれだー』と、あらためて幸せを感じました」
-なぜそこまで頑張れるのか。
「頑張っているとは思ってない。自分より頑張っている人はいっぱいいるだろうし、それを知っている。『きょうはお菓子食べよう、お酒飲もう』と妥協するところもある。そこは普通の人。ただ、人に選択を決められたくない、とはいつも思っている。チーム選びもそう。自分がやると決めたらとことんやれるけど、誰かが『これをやろう』と言ったことを仕方なくやると、絶対にその人のせいにする。自分で決めないと言い訳が出る」
「そういう考えが固まったのも海外に出てから。向こうで生き残るには味方をフォローしないといけない。でも『その人を助けている』とは思わずにやる。『僕が活躍するために、そいつを助けている』という考え方。自分自身に返ってくると考えることが一番頑張れる」
-自身の選択が間違って後悔することは。
「間違ったとは思わない。だからこそ、何を今やるべきか、それをずっと考えている。サッカーのことばっかり考えて寝られなくなる時もあるが、やっぱり(選択を)間違えたくないので。例えば夜中まで起きてお酒を飲んでしまったり、サッカーでも『何やってるんやろう』ということがあったりする。それを続けずに反省してパワーに変えられるか。失敗した時にどれだけリカバリーできるかが大事。失敗しない人はいない」
-挑戦は続く。
「いつまで続けられるか分からないが、個人的には次のワールドカップ(W杯)カタール大会までは続けたい。前回のW杯の悔しさがあったので…。僕もけがをして、本当にボロボロで。自分の力のなさだったら認めますけど、(けがで)何も役に立たなかった」
「(2018年W杯ロシア大会決勝トーナメント1回戦の)ベルギー戦をベンチから見て『次はこんな形で終わりたくない』と。サッカー選手としてもう一回やれるところを見せたい、という思いが出た。だから今も頑張れるんだと思います」
◇ ◇
【おかざき・しんじ】 1986年4月16日生まれ。兵庫県宝塚市出身。滝川第二高(神戸市西区)で全国高校選手権4強。2005年にJ1清水に進み、10年から欧州でプレー。15年、ドイツから移ったイングランド・プレミアリーグのレスターで優勝に貢献した。日本代表では国際Aマッチ通算119試合出場、日本歴代3位の50得点。10、14、18年のW杯3大会に出場。
2020/9/12-
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