岡崎慎司×兵庫 サッカーでまちおこし
滝川第二高のサッカー部OBらが神戸市西区で進める環境配慮型グラウンドの建設計画に、元日本代表FW岡崎慎司(35)=兵庫県宝塚市出身=が参画している。サッカー利用以外にも、地域住民に開放する予定で、岡崎がかつてプレーしたドイツの風景が原点になっている。
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2013年から2シーズン在籍したドイツ1部リーグのマインツ。当時、欧州主要リーグの日本人選手シーズン最多記録を塗り替えるなど、主軸として活躍した街の姿が目に焼き付いている。
「スタジアムは何にもないところにポツンとあるけど、チームバスで向かうと、人がどんどん集まってくる」
マインツはドイツ南西部の街。スタジアムは中心地から離れ、畑に囲まれている。何より、サポーターの様子に心が引かれたという。
「試合を見て盛り上がる人もいれば、試合があるけど仕事をしている人もいる。ビールを飲み、フェスタ(祭り)のように楽しむ人もいる。サッカーというツールを中心に、みんなが集まるのがすごく魅力的だった」
目的はさまざまでも、収容約3万人のスタジアムがコミュニティーとして成り立っていた。
■ドイツの日常
特別な空間は1部リーグに限った話ではなかった。アマチュア選手がプレーする11部リーグを訪れても、人々の憩いの場になっていた。
「大量の人が見に来るわけではないけど、そこには必ずカフェがあり、試合後はご飯を食べている。そういう光景がすごく良かった」
試合のハーフタイムには、ピッチが開放され、おじいちゃんが孫とボールを蹴り合う。日常の延長線上にサッカーがあり、交流の場としてグラウンドがあった。
足元の環境にも驚いた。11部のリーグであっても、ピッチは人工芝だった。日本にも増えてきたが、試合会場が土であることはそう珍しくない。ドイツには天然芝や人工芝のグラウンドが至るところにあり、試合がなければ、住民が使える。国民の健康増進を目的に整備されているからだという。
■共感した仲間たち
「将来、こういう場所が日本にできたらな」
生活とスポーツが密接するドイツ。その日常に触れた岡崎のビジョンに、母校滝川第二高OBらでつくる一般社団法人「マイスター」(神戸市西区)のメンバーが共感した。では、どう広めるか。
「逆算したら『なぜ、それが必要なのか』を証明しないといけない。(ドイツの事情を知る)みんなが言葉で『これが大事』と言ってきたと思うが、滝二の仲間たちと一緒に造ったら参考になる。そうしたら『色んな地域にグラウンドを造りましょう』となるかもしれない」
自身は現役生活に専念するため、マイスターのメンバーが先頭に立ち、グラウンド建設を計画。環境への負荷も減らし、持続的に使えるモデルケースとして示すため、欧州の先端技術の採用を決めた。
土地は神戸市西区平野町に見つけ、警察署が交番ではなく、駐在所を置くエリアにある。自家用車が行き交う道路が通るが、山と畑が広がる緑豊かな場所だ。
岡崎が見たマインツの情景と重なった。
■兵庫への恩返し
ここから最初は小さくても、大きな一歩が始まる。岡崎による恩返しの思いも込めて。
「自分が育った街に何かを返さないといけない。(10年の)南アフリカのワールドカップに出た時に感じたし、もっと言えば、Jリーグ(清水エスパルス)に上がってプロで生活するようになってから社会貢献を考えるようになった」
マイスターは「地域密着」を活動方針としている。岡崎がプレーしたドイツに加え、所属したイングランドやスペインのクラブも地域を大切にしていた。10月にも予定する着工にあたっては、マイスターのメンバーが地元自治会への説明を重ねてきた。
「そこに行けば幸せだなと思える場所」(岡崎)。単なる練習場に収まらず、地域とつながる居場所づくりが、兵庫にいる同志の手で本格化していく。(有島弘記)
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おかざき・しんじ 1986年4月16日生まれの35歳。兵庫県宝塚市出身。同市立丸橋小学校から三田市立けやき台小学校に転校し、同市立けやき台中学校を卒業した。サッカーの名門・滝川第二高校(神戸市西区)を経て2005年にJリーグ1部の清水エスパルスに入団。11年から本場の欧州に渡り、16年にイングランド・プレミアリーグのレスターを初優勝に導いた。ワールドカップには3大会連続で出場し、日本代表通算50得点は歴代3位。昨季限りでスペインリーグのウエスカを退団し、同国リーグ2部のカルタヘナに加入した。
2021/9/13-
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