西武バスの車両(提供)
西武バスの車両(提供)

 運転士不足に悩むバス業界でこの夏、2人の19歳運転士がデビューしました。西武バス(本社、埼玉県所沢市)新座営業所の蓮見正和さんと、練馬営業所の伊井リオさん。同社によると、「埼玉県内のバス事業者では最年少の路線バス運転士」なのだそう。若手の人材確保に秘策はあるのでしょうか。

■19歳で単独乗務…乗客対応に不安は?

 同社の路線バスは西武線沿線を中心に、東京都北西部から埼玉県南西部で運行。運転士は1419人おり、平均年齢は49歳。20代の運転士は51人で全体の3.6%です。

 このたびデビューした蓮見さんと伊井さんは2024年3月に高校卒業後、同社に入社しました。事務職として営業所での運行管理業務などに従事しながら、受験資格特例教習を受講し、大型二種免許を取得。研修を経て、2025年7月、晴れて路線バスの運転士としてデビューを果たしました。7月末現在、指導運転士が同乗していますが、秋までには単独乗務する予定です。

 同社担当者に話を聞きました。

 ──デビューに向けどんな研修を。

 「新入運転士に対し大型二種免許取得後、約1カ月間自社研修所において、突発的なアクシデントの発生時における対応をはじめとする研修のほか、運転技能や法令、接客に関する研修を実施しております。営業所配属後も、1~2カ月の指導運転士同乗の営業運行によるOJT(On the Job Training、仕事を通じた指導)を実施し、各路線環境に合わせた教育を行い、適切な運行をできるように指導しております」

 ──19歳での単独乗務に不安は。

 「2人は大型二種免許が取得可能となるまでの約10カ月の間、事務職として勤務をしておりました。事務職では主に、運行管理補助者として、路線バスの運行を支える側の立場として業務に従事していたほか、営業所窓口や電話でのお客さまへの対応を経験し、接客において臨機応変に対応する力が身についております」

 ──本人たちの反応は。

 「お客さま対応の中においては、バス停や路線に関する問い合わせを受けることも多く、2人とも『運転士として乗務する前に、バス停の位置や路線環境を知ることができた』と話しております」

■若い人材、確保するために

 ──会社として、運転士不足を解消するために取り組んでいることは。

 「未経験の方でも安心して入社いただける充実した運転士研修制度を設けるとともに、大型二種免許の取得にあたり、一定の条件を満たせば、大型二種免許の取得費用を会社で全額負担する運転士養成制度を設けております」

 ──若い人材を確保するためには。

 「これまでの中途採用による運転士採用のほか、新卒運転士の採用も強化し、大卒や専門卒を対象に採用活動を行ってまいりましたが、先般の道路交通法改正により、大型二種免許の取得要件が緩和されたことを受け、新卒運転士の採用枠を高卒にまで拡大し、より積極的な採用活動を行っております」

 「さらに直近では、特に若い世代に運転士という仕事の魅力を知っていただくため、TikTokやインスタグラムといったSNSや、CMによる情報発信を強化し、多様な人材の採用に力を入れております」

     ◇

 2022年の道路交通法改正により、特例教習を修了し、普通免許取得から1年以上あれば、19歳以上でも大型二種免許の受験資格が得られるようになりました。

 19歳のバス運転士はこれまでに、京都市交通局(2024年2月)、千葉交通(2024年7月)、新潟交通(2024年7月)、茨城交通(2024年11月)、宮城交通(2025年2月)などで誕生しています。

(まいどなニュース・金井 かおる)