T木さんの質問に応えたS本さんの発言(かとひとさんの提供)
T木さんの質問に応えたS本さんの発言(かとひとさんの提供)

社会人になると、忙しさが原因で「恋愛」を後回しにしてしまう人も少なくないでしょう。エッセイ漫画家・かとひとさんの作品『アラフォー女子が10年ぶりに恋をした』(主婦と生活社)は、大失恋したかとひとさんが10年ぶりに恋をした様子が描かれた一冊です。以前X(旧Twitter)に同作の「出会い編」が投稿されると、2000を超える「いいね」が寄せられています。

■野球観戦を通じて恋に発展

現在、交際9カ月でアラフォー婚をして旦那くんと猫のあーちゃんと穏やかな暮らしをしているかとひとさん。しかし、旦那くんと出会うまでの約10年は、大失恋によってこじらせていた期間があったのでした。

失恋後に“生ける屍”となったかとひとさんは何もできない状態が続き、2年の歳月を経て立ち直ります。スナックで働く中で遊びにも精を出し、やがて再び恋愛をする気力も復活して合コンや飲み会に参加したものの「ときめく気持ち」を思い出せません。やはり大失恋がトラウマになり、再び傷つくことを恐れていたのでした。

やがて40歳も近くなると、マッチングアプリがメインに。しかし、うまくいかないことが多く、完全に恋愛の仕方を忘れていたかとひとさん。そんな中、スナックの常連である「T木」さんがきっかけとなり、かとひとさんは自身が推している野球チーム「広島東洋カープ」の試合を観に行くことになります。

そして、T木さんを含めた野球仲間に加わり、神宮球場で体験する生の野球観戦に大興奮。その最中に声をかけてきたのが野球仲間のひとりであり、現在の夫である「S本」さんでした。かとひとさんは「イケメン」と思ったものの、まだ恋愛感情は抱いていません。

野球仲間との交流を堪能したかとひとさんは2回目の観戦にも参加し、試合後はT木さんとS本さんの3人で居酒屋に。和気あいあいと話していると、かとひとさんはS本さんに対して「面白い人」「関西弁でノリも良いしよく笑うし」と感じ、一瞬でも人を好きになりそうな雰囲気を思い出します。

そして、話題はT木さんが何年も会話をしていない娘さんの話になり、どうやら娘さんから初任給でプレゼントを渡されたものの「その前に言わなきゃいけないこととか やらなきゃいけないことがあるでしょ」ということで受け取りを断ったそうです。

かとひとさんは「信じられん」と心の中で思っていた一方で、「どう思う?」と聞かれたS本さんは「初任給でお父さんにプレゼントを買ってくる…良い娘さんに育ってますねぇ」と返します。そのどちらも否定しないS本さんの言葉に「え 神…?」と思ったかとひとさんは次第に胸の高鳴りを感じ、「私はこの人のことが好きだ」と自覚するのでした。

久しぶりに恋に落ちたかとひとさんでしたが、色恋ごとで野球仲間たちをかき回したくないと思ったことでS本さんへの好意を隠密にすることを決意。その後、「妹に好きな人ができたと報告したら声を上げて驚かれる」「S本さんとのLINEのやり取りが始まるも、返事がスタンプ1個の時があって悩み続ける」といった出来事が展開されます。

その最中、かとひとさんはS本さんにゾッコンで、野球観戦の際にS本さんがまったく似合っていない“ナンみたいな帽子”を被っていても「けど めっちゃ好き~」と思うのでした。

そして、野球仲間の女子たちにS本さんについて相談したり、T木さんにS本さんが野球仲間に加わった経緯を聞いたりする中、野球仲間によるバーベキューで2人の距離は大きく縮まります。というのも、かとひとさんがS本さんに好意を寄せていることが仲間伝いに本人に伝わっていたのでした。

そこから2人は食事の約束をして、迎えた当日にS本さんから「つきおうて」と告白されます。そして、2人はお互いに思っていたことや過去の出来事の答え合わせをして「仲良くやってこーね!」と告げるS本さん。出会ってから3カ月と2週間、こうして2人は結ばれるのでした。

読者からは「自分のことのように嬉しくなった」「行動することの大切さを思い出した」などの声が。そこで作者のかとひとさんに、同作を描いたきっかけについて話を聞きました。

■今でも「変な帽子」を被っている旦那さん

-同作を描いたきっかけを教えてください。

大きな失恋後に約10年、人を好きになれずにいたのですが、少し違う角度に勇気を出したら自然と10年ぶりに恋をすることができました。大きく変化した年だったこともあり、なにか形に残しておきたいなと思ったのと、漫画を描くことが好きで、コミックエッセイにも挑戦してみたかったことがきっかけで描き始めました。

-『出会い編』の中で、特にお気に入りの場面があれば、理由と一緒にぜひお聞かせください。

すごく変な帽子をかぶっていたのに、10年ぶりの恋には補正フィルターがかかっていたのか、「かっこいい」とか「かわいい」なんて思ったシーンです。今読み返すと、いや変な帽子だったよな…と笑えてくるので、好きなシーンです。ちなみに今でも彼は被ってます。

-ご自身の体験を振り返りながら描き、描き終わった時はどのような心境だったのでしょうか?

最初に恋に落ちた場面をX(当時Twitter)に投稿したところ、思いがけずたくさんの反響をいただきました。そこから「なんとか交際が始まるところまでは描ききりたいな」と思っていたので、まず一区切り描ききれたことでホッとしました。

-読者にメッセージをお願いいたします。

漫画を読んでくださりありがとうございます。SNSで日常エッセイ漫画やレポ漫画を描いています。この作品のその後も不定期に更新していますので、よかったらSNSなどものぞいていただけたらうれしいです。

(海川 まこと/漫画収集家)