婚礼衣装を身に着けた北浦淳也さん(左)と亜矢香さん=旧玉置家住宅
婚礼衣装を身に着けた北浦淳也さん(左)と亜矢香さん=旧玉置家住宅

 国の登録有形文化財「旧玉置家住宅」(三木市本町2)で7日、1組の夫婦が結婚写真を撮影した。共働きで「挙式はいいかな」と思っていた2人の背中を押したのは、ずっと成長を見守ってくれた「おばあちゃん」への思い。「立派な姿を見せてくれてありがとうね」。晴れ姿の2人を見た祖母たちの目に涙が浮かんだ。(小西隆久)

 大阪市の会社員北浦淳也さん(37)と、妻で会社員の亜矢香さん(37)。大学時代の同級生で、昨年10月に婚姻届を出した。「長い間、友達だった」ためか、共働きで忙しいからか、2人とも「結婚式はしなくていい」と考えていた。

 そんな2人にやきもきしていたのが、淳也さんの母玲子さん(61)=大阪府大阪狭山市。淳也さんの兄は福岡で、弟は京都でそれぞれ挙式したため、玲子さんの実家の三木市で暮らす祖母の中村咲江(さきえ)さん(98)は、孫たちの挙式に立ち会っていなかった。

 そんなとき、玲子さんの同級生でバンド仲間の向山裕子さん(61)=三木市=から「旧玉置家住宅でフォトウエディングができるよ。衣装もあるからやってみたら」と誘われた。祖母の咲江さんのことも含め、淳也さんと亜矢香さんに伝えると、2人は「おばあちゃんが喜んでくれるなら」と快諾した。

 淳也さんにとって三木は「おじいちゃん、おばあちゃんとの楽しい思い出」がたくさん残る場所だった。

 当日、北浦家のもう1人の祖母昭子さん(89)も出席し、咲江さんと初めて対面。咲江さんの妹の松原多枝子さん(81)も鹿児島から駆け付けた。淳也さんの父清仁さん(65)も礼服に身を包み、「なんだか自分が緊張する」と苦笑い。

 明治初期のたたずまいを残す古民家の和室で白無垢(むく)の亜矢香さん、羽織はかまの淳也さんと対面した咲江さん、昭子さんは「わあ、ほんとにきれいね」と目を細めた。両目に涙を浮かべて喜ぶ2人の祖母の姿に亜矢香さんも思わずほろり。一家そろっての記念写真はうれし涙と笑顔が入り交じる一枚になった。

 2人はその後、色打ち掛け、純白のウエディングドレス、カラードレスに着替え、約2時間かけて撮影。同住宅のボランティアや来館者からも「おめでとう」と祝福を受けた。「みんなにお祝いしてもらえた」と笑顔を浮かべる亜矢香さんをまぶしそうに見つめる淳也さん。「顔を見るのも照れくさかったけど、やってよかった」とはにかんだ。