大阪湾沿いのエリアを指す大阪ベイエリアでは昭和の時代から「南港」という地名が目立っているような気がします。大阪・関西万博以前の大阪ベイエリアを紹介するパンフレットを開くと「南港エリア」は目につきます。一方、「北港エリア」は見かけたことがありません。
なぜ、これほどまでに「南港」は存在感があるのでしょうか。現在万博が開催されている夢洲も南港に属するのでしょうか。大阪ベイエリアの地名事情について調べました。
■「南港」が目立つ事情
南港という地名が目立つ背景として、交通機関の発展が挙げられます。大阪南港フェリーからは四国・九州行き定期フェリー便が出航します。
1971年、南港にフェリーターミナルが開業しました。1980年の国鉄時刻表を見ると、索引地図にフェリーの路線図と「大阪南港」の表記があります。
1981年には、新交通システムのニュートラム南港ポートタウン線(住之江公園~中ふ頭)が開業。南港は大阪市営地下鉄(現Osaka Metro)四つ橋線・ニュートラム経由で、大阪市中心部と鉄道で結ばれたのです。また、ニュートラムには南港口駅、南港東駅と、「南港」が付く駅が開業しました。
■存在感が薄い「北港」
大阪ベイエリアには「南港」に対して、「北港」という地名も存在します。しかし、南港と比較すると、存在感が薄いのが実情です。「北港」を名乗るフェリーターミナルはありません。その代わり、大阪北港マリーナ(旧大阪北港ヨットハーバー)が存在します。元は大阪市が運営するヨットハーバーとして、1987年に開業したのがはじまりです。
しかし、バブル崩壊などに伴って来場者は減少し、存在感が薄くなりました。2014年より民間会社が引き継ぎ、息を吹き返しています。
また、南港とは異なり、「北港」が付く駅名は存在しません。
■夢洲は「北港」か「南港」か
そもそも、南港、北港はどのエリアを指すのでしょうか。近畿地方整備局の資料によると、コスモスクエア駅、中ふ頭駅、インテックス大阪がある咲州が南港、万博が開催されている夢洲、そして舞洲は北港に分類されています。
2025年開業のOsaka Metro中央線コスモスクエア~夢洲間は、OTS(大阪港トランスポートシステム)が鉄道施設を保有。OTSとしての路線名は「北港テクノポート線」です。しかし、OTS が運行を担当していないこともあり、「北港テクノポート線」の名称はほとんど知られていません。
これからも「北港」という名称は表に出ず、北港に属する夢洲と舞洲は、それぞれの「島名」が定着することでしょう。一方、夢洲と比較すると、南港の「咲州」の定着率はイマイチ、といったところです。
今後は「南港」「南港エリア」よりも、舞洲・夢洲・咲州を含んだ名称「大阪ベイエリア」も定着するように思えます。いずれにせよ、大阪ベイエリアの地名事情は、意外と複雑なことがわかりました。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)