駅前での路上ライブにより信号音やエレベーターのアナウンスがかき消されるという(photoACより「丸岡ジョー」さん撮影、イメージ画像)
駅前での路上ライブにより信号音やエレベーターのアナウンスがかき消されるという(photoACより「丸岡ジョー」さん撮影、イメージ画像)

X(旧Twitter)に投稿された「音響信号の大切さ」を訴える視聴障がい者の声が、大きな反響を呼びました。

投稿したのは「暗闇の姫」さん。目が見えず、日常生活の多くの情報を“音”から得ている彼女は、駅前での路上ライブにより信号音やエレベーターのアナウンスがかき消され、不安に襲われた経験を投稿しました。

「路上ライブをやっている人は、大きな夢を抱いて頑張っているんだと思う。でも、ごめんね。そこは、音響信号のすぐそばなんだ。そこは、地下鉄のエレベーターのすぐそばなんだ」

この切実な声に対し、SNS上では「考えたこともなかった」「命を守る音を消してしまう危険がある」といった共感のコメントが数多く寄せられました。

■ 「安心できるのは音響信号があるから」

暗闇の姫さんは、音響信号が日常に欠かせない存在だと語ります。

「音響信号があると安心して渡れます。もちろん車の音も確認しますが、“赤かもしれない”という不安がなくなるんです」

ただし万能ではありません。歩車分離式の交差点などでは、音が鳴らないために赤信号のまま渡ってしまうこともあるそうです。「渡り終えた時に一斉に『ぴよぴよ』『かっこー』が鳴き出して、“やってしまった”と気づくこともあります」と振り返ります。

また、音響信号の工夫についても注目しています。

「『ぴよぴよ』は手前と向こう側で音が違っていて、『ぴよ。ぴよぴよ。ぴよ』と交互に鳴るんです。渡り始めに近くから『ぴよぴよ』が聞こえたら、対岸の『ぴよ』を目指せばいい。そんな工夫に助けられています」

■ 「音が消える」怖さ

問題は、そうした大切な音が、路上ライブや演説などでかき消されてしまうこと。

「地下鉄のエレベーター前で『ぴーん、ぽーん』という到着音や、『下へまいります』のアナウンスが全部聞こえなくなったことがありました。みなさんが突然目を覆われた時と同じで、とても怖いんです」

SNSでは点字ブロックを塞がないようにという呼びかけが広がっていますが、実際には「そこまでたどり着くこと自体が難しい」という現実もあるといいます。

「困っていると声をかけてくださる方も多いのですが、その声もかき消されがちで、大きな声で呼ばれると逆にびっくりしてしまいます。コミュニケーションを取るのも難しくなるんです」

■ 「なるほど、考えたこともなかった」反響続々

今回の投稿には12万件のいいねが集まりました。

「路上ライブは人を元気にするけど、命を守る音をかき消す危険があるのか」「大事なのは音量ではなく気づき」など、多くの共感の声が寄せられました。

暗闇の姫さんが印象に残ったのは、音響信号の仕組みに気づいていた人のコメントだったといいます。

「『ぴよ。ぴよぴよ』と交互に鳴っていることに気づいていた人がいたのは驚きでした。普段、横断歩道が音響信号かどうかすら覚えていない人が多い中で…」

「点字ブロックは意識していたけれど、音については考えたことがなかった」というコメントも多く、「私の投稿をきっかけに“音の目印”に気づいてもらえたらうれしい」と語ります。

■ 「目を閉じて、耳を澄ませてみてほしい」

最後に、路上ライブや音楽活動をする人へのメッセージもありました。

「全ての音に気づけとは言いません。ただ、演奏する前に目を閉じて周囲の音を聞いてみてほしい。『この音が聞こえなくなったら困る人がいるかも』と思ってもらえたらうれしいです」

「普段、街中の音に耳を澄ますことは少ないと思います。でも、私たちは音から世界を“見て”います。その視点を知ってもらえたら、もっと安心できる社会になるのではないでしょうか」

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)