大人になると、マナーや常識を知っていて当たり前だと考えがちです。でも、実は周りが意外と自分のことを気にしていないことに気づけたら肩の力を抜くことができるかも知れません。漫画家のゆきさんがX(旧Twitter)に投稿した作品『自意識過剰な私が知った「ちゃんとしなくても大丈夫」の理由』では、ゆきさん自身の気づきが描かれています。
物語は、ゆきさんが15年ぶりに学生時代の先輩から連絡をもらう場面から始まります。先輩から、息子にプレゼントするTシャツ用の絵を描いて欲しいとお願いされ、完成品を届けに先輩の家を訪問することになります。そこでゆきさんは逃げ出したいほどのプレッシャーに襲われてしまうのでした。
なぜなら、ゆきさんは大人のルールやマナーに自信がありません。大人になると様々な場面で求められるマナー。今までやらかした気まずい記憶が頭をよぎってしまいます。失敗を怖がらずに挑戦しようと覚悟を決め、手土産も必死で選びます。しかし、先輩の好みが分からず、迷った手土産をどちらも用意することに。
15年ぶりに会う先輩との会話に備えて、聞かれそうな質問もシミュレーションします。そして、心臓の音が自分にも聞こえそうなほど緊張しながら、先輩の家のインターホンを鳴らしました。お邪魔した先輩の部屋は、イメージとは違い生活感に溢れています。
イラストを渡し、ついに想定していた質問が……と思いきや、これから息子さんの送迎があるということで、あっさりと帰宅することに。帰りの車で、ゆきさんは「人って私にあんまり興味ないのかも」と悟ります。
自分にとっては大人に見えていた先輩の家にも意外と生活感があったことから、みんな自分の人生に精一杯であることを知って、肩の力を抜くことができたのでした。同作について詳しいお話を、作者のゆきさんに聞きました。
■無意識に人に「期待」するのをやめようと思った
-こちらの作品を執筆したきっかけを教えてください。
実際に経験した出来事で、自分が不安から思考して対策しつつ臨んだことが、全く的外れだったことから、自分の思い込みに気付いたのがきっかけです。
-作品への反響で気になったコメントはありましたか?
「ちょうど失敗だらけで記憶から消したいと思っていた。でも“人って私に興味ないかも”でスッと心が軽くなった」というコメントは、私も小さいことを長く思い詰めるので孤独感が和らいだように感じ、印象に残っています。
-こちらの先輩は?
学生時代のアルバイトでお世話になった方です。社会に出てからも気にかけていただいていたのですが、いつの間にか疎遠になってしまってました。
-「ちゃんとしなくても大丈夫」と感じてから、ご自身の生活や考え方に変化は?
人に「どう見られるか」を相当気にしていたので、実は普段から人に自分をこう見てほしいと「期待」していることに気づきました。無意識に自分が培ってしまったクセなので、急に人への期待をやめることは難しいのですが、「あぁ、今人に期待してしまっているな」と気づいた時には、この出来事を思い出すと肩の力が抜けて、以前より気持ちが安定することが増えました。
-読者へのメッセージを。
誰かに迷惑をかけないようにと、つい「ちゃんとしなきゃ」と思いすぎてしまう方は多いと思います。でも、多少ゆるんでいても人は案外あたたかく受け止めてくれるものだと感じています。読んでくださった方が「私も大丈夫かも」と少しでも気楽になっていただけたらうれしいです。
(海川 まこと/漫画収集家)