大切な人を失ったとき、心にぽっかり穴が開いたような感覚に襲われるでしょう。日常に追われる中でふと訪れる寂しさや、誰かに寄り添ってほしい気持ちは、多くの人が経験するものです。そんな心の隙間をそっと埋めてくれるような不思議な出来事を描いたのが『変わらない気持ち(ウロの物語 - 22)』(作:かんさびさん)です。
ある日、女性が猫の世話をしていると見たことがない猫が現れます。その迷い猫に餌をやりながら、女性は大好きなおばあちゃんの話を始めます。それは、彼女を育ててくれたおばあちゃんが、病気で倒れた時のことです。おばあちゃんは「生活に困らない準備はしてある」「親戚の人について行ってはいけない」と言い残し、亡くなってしまいます。
おばあちゃんの棺桶の前で泣いていると、ふと記された名前が「津猫」と書いてあることに気が付きます。おばあちゃんの名前は「常子」だと思っていたため女性は驚き、棺を開けてみると、そこにはおばあちゃんではなく1匹の猫が入っていたのです。さらに白い喪服を着た親戚を名乗る人たちが現れ、「一緒に行くかい?」と聞かれますが、おばあちゃんの言いつけを守ってそれを断ります。
それ以来ずっと食べ物やお金が届けられるようになり、1人で生きてきたのでした。それ以来、彼女はおばあちゃんのことを知っている猫を探し続けています。そして最後には、うたた寝をする女性の元におばあちゃんが現われ、彼女を優しく抱きしめるのでした。
読者からは「私も亡くなった祖母に会いたくなりました」「猫って不思議なくらいに心情を察してくれますよね」など、感動の声が多数あがっています。そんな同作について、作者のかんさびさんに詳しく話を聞きました。
■民俗学を題材に生まれたストーリー
ーこのお話はどのようなきっかけで生まれたのでしょうか?
私は民俗学に興味があり、昔の風習や民間信仰をよく調べています。たとえば、昔は子どもにあえて悪い意味の名前をつけ、一定の年齢になったら同じ読みで別の漢字に変える習慣がありました。獣の名前をつけて、大人になったら普通の漢字にすることで子どもを魔除けする。そんな風習から、このお話のアイデアが生まれました。
ー不思議で少し怖いのに、最後に優しさが残る結末が印象的ですね。物語のトーンは最初からこの形で考えていましたか?
もともとは「主人公の育ての親が人間ではなかった」というオチを見せたかったのですが、描き進めるうちに、主人公の女の子と猫のおばあさんの絆の物語にしたいと感じました。二人とも幸せになってほしいと思い、最終的にはこのような形に落ち着きました。
ーコメントがたくさんありましたが、印象に残っているコメントはありましたか?
たくさんの「温かくなった」「癒された」といったコメントがとても嬉しいです。私は読む方に「静かな癒し」を届けたいと思いながら漫画を描いているので、こうした言葉をいただけるのは、本当に励みになります。
(海川 まこと/漫画収集家)
























