「あ、( ; ; ) もうこの世にはいないとか信じられないよ」
そんな短い言葉とともに投稿された一文が、多くの人の胸を打った。
投稿したのは、大学生の「てつめ浪」さん(@tinolovelive)。半年前に亡くなった母が、5年前に作ってくれた“手作りの英単語帳”を今になって再発見したのだった。
■「めんどくさいな」と思っていた、あの頃の自分
2020年3月3日、てつめ浪さんはこんな投稿をしている。
「お母さんが俺のために作ったとかいって持ってきたけど、馬鹿にしすぎだろ笑笑」
当時は、正直に言えば「めんどくさいな」と感じていたという。
「母が作ってくれた単語帳を受け取ったときは、特にありがたいとも思っていませんでした」
多くの人が経験するように、親の気持ちは“当たり前”の中に埋もれてしまう。その価値に気づくのは、いつも少し時間が経ってからだ。
■スマホが壊れ、Xで見つけた“母の痕跡”
母親が亡くなったのは、今年2月。遺伝性の肺がんステージ4で、8年間の闘病生活を送っていた。
「スマホが壊れて、母の写真やデータが全部消えてしまったんです」
そんな中、偶然Xで過去の投稿を見つけた。そこに写っていたのが、あの英単語帳だった。
「びっくりしました。忘れかけていた記憶が、一気によみがえってきて……胸に来るものがありました」
■“もうこの世にいない”と、改めて突きつけられた瞬間
母が亡くなってから半年以上。日常は少しずつ前に進み、思い出も薄れていく。それでも、突然訪れる“実感”の瞬間がある。
「『もうこの世にいない』って、頭ではわかっていたはずなのに、改めて突きつけられた感じでした」
とくに思い出すのは、闘病中の母の姿だという。
「がんで急に弱くなって、最後は動けなくなっていくのを間近で見ました。本人は悪くないのに、ずっと申し訳なさそうな顔をしていて……」
■寄せられた共感の声「親の愛、その記憶は宝物」
投稿には、多くの共感が寄せられた。
「こういうの、シンプルだけど一番辛い」
「私も祖母のお年玉袋の字を見るたび泣ける」
「親の愛、その記憶は宝物だよ」
こうした反応について、てつめ浪さんはこう語る。
「みなさんが“家族を大切にしよう”って思ってくれる反応が多くて、良かったなと思いました」
■もし今、母に言葉を届けられるなら
最後に、もし今、母親に言葉をかけられるとしたら…。
「最後まで闘病生活を頑張ってくれて、お疲れさまでした、って伝えたいです」
かつては「めんどくさい」と思っていた英単語帳。それは今、母の愛を確かに残す“形見”となった。親が差し出してくれた小さな優しさは、失ってから初めて、その重さに気づくのかもしれない。
◇ ◇
この投稿は、特別な出来事ではない。だからこそ、多くの人が「自分のこと」として胸を締めつけられた。“親の心、子知らず”──その言葉の意味を、静かに、深く考えさせてくれるエピソードだった。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)
























