密かに思いを寄せていた相手が会いに来た(ますだみくさん提供)
密かに思いを寄せていた相手が会いに来た(ますだみくさん提供)

もし世界が終わるとしたら何をして最後を過ごすかという究極の問いに、どのように答えるべきなのだろうか。そんな世界の終わりの様子を描いた作品『地球最後の日に好きだった子と飯を食べる話』(作・ますだみくさん)が、SNSで注目を集めています。

物語の主人公は、小森というごく普通の青年です。町中にはサイレンが鳴り響き、「残り11時間となりました。99.9%の確率で巨大隕石が地球に落下すると予想されます」というアナウンスが流れています。世界の終わりを目前にしながらも、小森は「何もない俺は、きっといつも通り適当に飯食って、ギター弾いて、適当に死んでいくんだろう」と、どこか他人事のように考えていました。

そんな彼のアパートに、突然大学時代のサークル仲間・河野が現れます。「最後の晩餐、一緒にどう?」と手土産を抱えて現れた河野に戸惑いながらも、小森は彼女を部屋に招き入れます。

かつて部屋は仲間たちの溜まり場で、小森は当時、河野に淡い恋心を抱いていました。一方で音楽の夢を追い続ける小森は、仲間たちが就職や結婚で移り変わっていく中、取り残された感覚を抱えていました。

2人ですき焼きを囲むうち、電気もネットも途絶え、部屋は暗闇に包まれます。スマホの灯りの中で語り合い、話題は小森のペンダントへ。それは、かつて可愛がっていた猫の骨が入っているのでした。それを見た河野は「小森のそばで死んだこの子は幸せだったろうね」と静かに語ります。

その後、2人が最後に行ってみたいと向かったのは、かつて仲間たちと花火を見たアパートの屋上でした。停電で真っ暗な街を見下ろしながら、河野は「私は小森に会いに来た」と告げます。意外な答えに小森は抱えていた不安や劣等感を吐き出しながら、「幸せなまま死んでほしかった」と、河野への思いを明かすのでした。

すると河野は「小森ってやっぱり優しいね」と笑い、自分が小森の音楽に救われてきたこと、ずっと聴き続けてきたことを打ち明けます。そして「好きだよ。私の最後にも小森がいたらいいのにって思うぐらい」「だから会いに来たの」と、ほほ笑むのでした。

読者からは「すごく良かった」「泣いてしまったんだが...」など、賛同の声が多くあがっています。そんな同作について作者のますだみくさんに話を聞きました。

■静かだけれど、どこかあたたかい気持ちが残ってくれたらうれしい

ーこの物語を描こうと思ったきっかけを教えてください。

会いたい人に会えなかったことや、飼い猫たちとの別れをきっかけに、「自分は最期の瞬間、誰と一緒にいたいんだろう」と考えるようになったのが始まりです。

極限の状況だからこそ、特別な出来事ではなく、日常の延長のような静かな時間を描きたくて、このような形の「最後の日」になりました。

ー本作を描くにあたり、どのようなことを意識されていましたか。

 特別な関係性というより、「昔は近かったけれど、今は少し距離のある知り合い」くらいの関係を意識して描いています。

”恋人でも親友でもないけれど、一緒にいた時間の蓄積だけは確かにある”そんな曖昧な距離感が、この2人らしいなと思いました。

ペンダントの猫や、周囲の人たちの変化についても、物語を大きく動かすためというより、小森が積み重ねてきた時間や、取り残されている感覚を静かに伝える存在として置いています。

全体を通して、感情を説明しすぎず、会話の間や沈黙に滲むものを大切にしながら、その場に流れる空気を感じてもらえるよう意識しました。

ー読者の心にどのような感情や余韻が残ってほしいと考えていますか。

静かだけれど、どこかあたたかい気持ちが残ってくれたらうれしいです。

この物語は「終わり」を描いていますが、同時に「誰かの人生に確かに届いていたもの」も描いているつもりなので、自分の中にも、誰かにとっての小さな支えになっている部分があるかもしれない、そう感じてもらえたらいいなと思っています。

ー同作以外で最近執筆した作品などはありますか?

Net ViViにて、ファッション業界を舞台にした恋愛漫画シリーズ『及ばぬ恋は馬鹿がする』を連載中です。現在は男性同士の恋愛を描いた作品を連載しており、売れっ子スタイリストと年下のヘアメイクアーティストが、同居をきっかけに少しずつ距離を縮めていく物語です。

こちらのお話は、全話無料で読むことができます。また、第1シーズンでは男女の恋愛を扱ったお話を連載しており、現在デジタル単行本も発売中です。

(海川 まこと/漫画収集家)