きょうは「国際女性デー」。性別による差別のない社会を目指して国連が1975年に定めた。
日本で最も男性に偏っているのが政治の世界である。女性初の首相が誕生した一方、2月の衆院選では当選者の女性割合は14・6%にとどまり、2024年の前回選挙を下回った。経済分野でもフルタイムで働く男女の賃金格差は依然大きく、解消のペースは鈍化している。
ジェンダー平等へ向け、地道な努力が求められる。避けて通れないのは、家事や育児、介護など女性が多くを担っている「ケア労働」を家庭内や社会でどう分担するかという課題だ。専業主婦という生き方を選んだ人の話から始めたい。
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「対岸の家事」(朱野帰子(あけのかえるこ)著)という小説がある。昨年にテレビドラマ化され、話題になった。主人公は夫と小さい娘と暮らす20代の専業主婦。子育てしながらフルタイムで働く30代女性に「専業主婦なんて絶滅危惧種」と揶揄(やゆ)され、揺れる。自分の選択は正しかったのか-と。
神戸市灘区の兒高(こたか)陽子さん(47)は「どっちの気持ちも分かるなと思ってドラマを見ていた」と振り返る。大学卒業後、10年間会社員として充実した日々を送った。長男の出産を機に夫の勤務地である神戸に他県から移り、専業主婦になった。
長時間労働是正を
決断に迷いはなかったが、知らない土地で赤ちゃんと2人きりで家にいると孤独感に襲われた。「毎日頑張っているけど評価されない。社会がすごく遠くなった感じ」。ドラマの主人公も、家事や育児にやりがいを感じながら社会に居場所がないと寂しさを抱えていた。
兒高さんは数年の専業主婦生活を経て、子どもと関わるNPO法人での活動や幼いころから習っていた書道を生かして教室を始めた。「誰かの役に立っていると実感できるのがうれしい」と笑顔を見せる。
男女共同参画白書によると、妻が64歳以下の世帯のうち専業主婦世帯は1990年代に少数派に転じた。2024年時点で共働き世帯は専業主婦世帯の3倍に当たる1222万世帯に上り、このうち6割は妻がパート勤務をしていた。
若者の意識も変化している。21年の出生動向基本調査では、未婚女性の理想の生き方と、未婚男性が将来のパートナーに望む生き方は、ともに「仕事と育児の両立」が最も多かった。15年の前回調査で1位だった「いったん退職し、子育て後に再就職」は急減した。
しかし、「男は仕事、女は家庭」という旧来の価値観はなかなか変わらない。男性の長時間労働がその象徴と言える。
経済協力開発機構(OECD)の国際比較を見ると、日本の男性の有償労働時間は最も長い。一方、家事や育児といった無償労働時間は女性の5分の1で最短レベルだ。この傾向は共働きでも妻が専業主婦でも変わらない。家庭に時間を割きたくてもかなわない男性もいるだろう。
固定観念で縛らず
男性の働き方が女性の「しんどさ」に拍車をかける。知らず知らずに古い価値観にとらわれ、仕事も家事も完璧にと自らに高いハードルを課す女性も少なくない。それが働く女性と専業主婦の対立を生んでいないか。「遊んでいると見られる」。23年に40代女性から本紙に届いた投稿には、専業主婦の立場が理解されないことへの悔しさがにじむ。
甲南大学経営学部の奥野明子教授は「『専業主婦』対『働く女性』のようなグループ分けは物事を単純化させ、対立を生む。ケア労働を軽視する社会も変わらない。違いより家事や育児の喜びや悩みなどの共通点に目を向けることが大切」と話す。
その上で、心身の病気などで専業主婦にならざるを得ず困窮しているケースもあるとし、きめ細かな公的支援の必要性を訴える。どのような働き方をしても公平性が担保される社会保障制度改革も重要になる。
加古川市の高山千幸さん(58)は多忙な夫に代わり、2人の子どもの世話や自治会の役職などを引き受けてきた。数年前、子育てが一段落したときに「心の危機」が訪れた。冒頭で紹介した兒高さんと同じような言いようのない孤独感だ。
リハビリのつもりでアルバイトを始め、気づかされたという。「自分にとっての専業主婦のやりがいは、社会との接点があってこそ」
「女だから」の固定観念で自分を縛らず、自由に選んだ生き方を尊重し合える社会へ向け、小さくても一歩を踏み出す日としたい。
























