首都圏で暮らす会社員のAさん(40代女性)は、地方に住む母親へ毎月3万円の仕送りを続けています。父親が亡くなってから、母親の収入は年金のみ。やりくりが厳しい月もあると聞き、「少しだけ助けてほしい」と頼まれたことがきっかけでした。
最初は負担感はありませんでした。やがて子どもが中学生になり、塾代や習い事などの教育費が増えてくると、家計の余裕は徐々になくなります。住宅ローンや生活費を支払い、教育費を確保したあとに残るお金はどうしても限られます。老後のための蓄えも十分とはいえません。
親を助けたい気持ちはあるものの、「このまま仕送りを続けていて大丈夫なのだろうか」と不安を感じることも増えてきました。Aさんは仕送りをどこまで続けるべきなのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの岡ゆきこさんに聞きました。
■親を助けたい…でも家計が苦しい…どうすればいい?
ー仕送りを減らしたいとき、どう切り出すのが現実的ですか?
仕送りは義務ではなく「扶養的支援」であり、自分の世帯の生活を犠牲にしてまで続けるものではありません。特に教育費ピーク期は、期間限定で支出が急増するため、家計を優先する判断も必要です。
親への切り出し方の例でいうと、子どもの大学入学から卒業までの4年間は仕送り額を1万円に減額するなど、期間を区切って調整する方法があります。また、きょうだいがいる場合、仕送りの負担割合を話し合い、分担を見直すのも1つの方法です。
また、仕送りの代替支援として、物資支援(食料・日用品)など、現金以外の支え方もあります。
ー親への仕送りは、月いくらまでが家計的に無理のない範囲でしょうか?
親を支えたいという思いはとても大切ですが、仕送りは「できる範囲」ではなく「続けても家計が崩れない範囲」で考えることが大切です。目安としては、毎月の手取り収入の5%以内に収められると、家計と両立しやすい水準といえます。
例えば手取り月収が40万円前後のご家庭であれば、仕送り2万円(5%)ですと、家計圧迫が比較的少ないというバランスです。
ー教育費や老後資金と両立するうえで、仕送りが家計の負担になりやすいのはどんなケースですか?
特に注意が必要なのは、教育費や住宅ローンなどの支出が重なる時期にある家庭です。例えば、子どもが大学受験を控えて教育費が増えている場合や、住宅ローンの返済が続いている場合ですね。また老後資金の準備が十分ではない場合などです。
このような状況では、今後5~10年が家計の負担が最も重い時期に入ります。この時期は、教育費・住宅費・老後資金準備が同時進行するため、仕送り額はライフプラン全体で見た「持続可能な額」で判断する必要があります。
ー親に仕送りしている場合、扶養控除の対象とすることは可能ですか?
Aさんのようなケースで「仕送りをすることで親を扶養控除の対象にして、所得税や住民税の軽減することは可能なのか?」と質問を受けることは多々あります。ただ親に仕送りをしていても、必ずしも扶養控除の対象になるわけではありません。税法上の「扶養親族」と認められるには、いくつかの要件を満たす必要があります。
まず重要なのは、親と生計を同一にしていると判断されることです。別居していても、定期的な仕送りにより生活を支えていれば対象となります。年1回の援助ではなく、継続的な生活費補填であることがポイントです。
もう1つの条件は、親の合計所得が48万円以下であることです。親の収入が公的年金のみであることや、親が65歳未満で年金収入が108万円以下であること、親が65歳以上で年金収入が158万円以下であることが目安とされています。
控除額は年齢により異なり、70歳未満の場合は一般扶養控除として38万円、70歳以上の場合は老人扶養控除として48万円~58万円となります。
よくある誤解として、「月◯万円以上仕送りしないと扶養に入れない」という金額基準は明確に定められていません。
ただし税務調査時には、振込履歴や仕送り頻度などから「本当に扶養しているか」が判断されるため、銀行振込など、記録が残る形でおこなうようにしましょう。
◆岡ゆきこ(おか・ゆきこ) 独立系ファイナンシャルプランナー/FP事務所「FREE SEASON」代表
大手損害保険会社での勤務を経て独立し、これまでに家計相談・資産形成・保険見直しなど延べ100件以上の相談に対応。教育費・住宅ローン・老後資金など「子育て世代のライフプラン設計」を専門とする。セミナー・メディア監修・記事執筆など幅広く活動。女性や共働き世帯に寄り添い、“守りと備え”のバランス型資産設計に定評がある。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)























