日向坂46の正源司陽子
日向坂46の正源司陽子

アイドルグループ・日向坂46に正源司陽子というメンバーがいる。4月からニッポン放送の「オールナイトニッポンX」でパーソナリティを務めるなど、活躍の幅を広げている。

この「正源司」という名字は「しょうげんじ」と読み、一度聞いたら忘れないものだ。「正源司」はかなり珍しい名字で、熊本県や千葉県などにわずかに点在している程度。「しょうげんじ」と読む名字は他に「生源寺」や「正源寺」があり、いずれも珍しい。このうち最も多いのが「生源寺」で、やはり熊本県に多い。「生源寺」は歴史が古く由緒ある名字で、おそらく「生源寺」から「正源司」や「正源寺」が生まれたのだろう。

比叡山の麓の滋賀県大津市坂本に、日吉大社という古い神社がある。

第10代崇神天皇の時代に創建されたという古い神社で、全国に3800余ある日吉・日枝・山王神社の総本宮である。社殿の立つ場所が平安京の表鬼門にあたるため、平安時代から都の守護神としても信仰された。

この神社の神職を務めたのが古代豪族の鴨氏で、平安時代中期に左右2家に分かれた。そして、左方が生源寺家、右方が樹下(きのした)家と名乗って、以後この両家が代々日吉大社の神官をつとめた。

戦国時代には一部が武士化したらしく、江戸時代には熊本藩士に生源寺家があった。熊本藩家老の米田(こめだ)家は、もとは近江坂本の土豪で、日吉大社の生源寺家とは関係があったとみられる。現在も「生源寺」は熊本市に集中している。

江戸時代以前、名字はある程度自由に変えることができた。そのため分家した際に名字を変えるということは各地で広く行われていた。

その際に全く違う名字にしてしまうと、一族かどうかがよくわからなくなることから、発音は同じで漢字を変えるという方法が採られることが多かった。発音が同じため日常会話では一族とわかる一方、書類や墓などでは漢字が違うので本家分家関係がはっきりするからだ。

「正源司」も、名門「生源寺」家の一族であることを残しつつ、一部漢字を変えることで分家であることを示しているものと考えられる。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら研究を続ける。2017年から5年間NHK「日本人のおなまえっ!」のコメンテーターを務めた。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。