子育てに悩む母親※画像はイメージです(yamasan/stock.adobe.com)
子育てに悩む母親※画像はイメージです(yamasan/stock.adobe.com)

山田さん(仮名・女性)は、5歳で自閉スペクトラム症と診断された息子を育てるシングルマザーです。週3回の療育通所、月1回の発達外来、そして民間の言語療法。毎月の出費は医療費・療育費だけで数万円に膨らみ、「このまま家計が持つのだろうか」と頭を抱えていました。そんなとき、同じ境遇の親の会で「特別児童扶養手当」の存在を知り、役所に相談すると2級に認定。月額換算で約3万8930円(支給は年3回で、4月・8月・12月にまとめて振り込み)を受け取れるようになり、「なぜもっと早く知らなかったのだろう」と感じたといいます。

発達障害や慢性疾患を持つ子どもを育てる家庭では、医療費・療育費・教育費が一般家庭に比べて大きな負担となりがちです。しかし日本には、そうした家庭を支えるための公的手当や医療費助成制度が複数用意されており、うまく活用すれば年間数十万円規模の家計負担を軽減できます。この記事では、代表的な制度の内容・申請方法・組み合わせ活用例を当事者目線でわかりやすく解説します。

■家計を直撃する「見えない出費」の実態

発達障害や慢性疾患のある子どもの養育では、定期的な医療機関への受診に加え、療育(児童発達支援・放課後等デイサービス)、補助教材、送迎費用など、さまざまな出費が積み重なります。

児童発達支援の利用者負担は原則1割ですが、3歳~5歳までの就学前児童については無償化されており、多くの場合自己負担はゼロとなります。無償化の対象外となる0~2歳児や、所得区分が一定額以上の世帯の場合は、世帯収入に応じて月額の自己負担上限が設定されており、0円~最大3万7200円の範囲で決まります。民間の療育プログラムや習い事を併用すれば、さらに出費は増えます。

自治体によっては独自の軽減制度を設けている場合もあるため、お住まいの市区町村窓口で確認されることをおすすめします。

そして厚生労働省の調査によれば、障害者・障害児を持つ家庭が最も必要とする支援の筆頭は「手当・年金などの経済的援助の充実」と「通院して医療を受けること」でした。こうした現実があるからこそ、公的制度を知り、確実に申請することが重要です。

■柱となる2つの手当を理解しよう

◆特別児童扶養手当

特別児童扶養手当は、「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」に基づき、20歳未満で精神、または、身体に中度以上の障害がある子どもを養育する父母・養育者に支給される国の制度です。2026(令和7)年4月以降の支給額は、重度(1級)が月額5万8450円、中度(2級)が月額3万8930円となっています。

対象は身体障害者手帳1~3級程度、療育手帳の重度または中度程度(自治体により区分が異なります)のおおむねこれらに相当する障害の状態のほか、自閉スペクトラム症など精神障害により日常生活に著しい制限を受けるお子さんも含まれます。

手帳がなくても、診断書に基づく審査で認定される場合があります。所得制限があるものの、申請できる所得の上限は比較的高めに設定されており、所得制限の範囲内であれば共働き世帯でも受給できるケースが多くあります。申請は住所地の市区町村窓口で行い、認定には通常2~3カ月程度かかります。申請した月の翌月分から支給が始まるため、できるだけ早く動くことが大切です。毎年8月に所得状況届の提出が必要な点も覚えておきましょう。

◆障害児福祉手当

障害児福祉手当は、精神または身体に重度の障害があり、日常生活において常時介護を必要とする在宅の20歳未満の子ども本人に支給される手当です。2026(令和7)年4月以降の支給額は月額1万6560円で、年4回(2月・5月・8月・11月)に支給されます。

特別児童扶養手当との併給も可能ですが、併給するには障害の状態が障害児福祉手当の要件(日常生活において常時介護を必要とする程度)にも該当する必要があります。たとえば知的障害の場合、療育手帳A(重度)程度が目安となります。特別児童扶養手当2級の認定を受けていても、障害児福祉手当の要件を満たさないケースもあるため、個別に確認が必要です。なお、障害を事由とする公的年金を受けている場合や、児童福祉施設などの入所施設に入所している場合は受給できません。

■医療費助成と税控除も忘れずに

医療費の負担を減らす制度として、自治体の子ども医療費助成(多くの自治体で中学・高校生まで無料または低額)や、指定難病・小児慢性特定疾病医療費助成制度があります。ただし、子ども医療費助成は自治体ごとに制度内容が大きく異なり、対象年齢や所得制限、自己負担の有無などに差があるため、お住まいの地域での確認が欠かせません。

小児慢性特定疾病医療費助成制度は対象疾病に該当すれば医療費の自己負担に月額上限が設けられます。上限額は世帯の所得区分、重症患者認定の有無、人工呼吸器等装着者(重症患者のうち特に継続的な医療的ケアが必要な方)かどうかなどによって決まり、条件によっては自己負担がゼロになるケースもあります。

また、所得税における特別障害者控除(40万円)や障害者控除(27万円)、医療費控除(実費の一定割合)を確定申告で申請することで、税制上の負担を軽くできます。これらの控除は申告しなければ自動的には適用されないため、注意が必要です。

■制度を組み合わせると年間どれほど節約できる?

障害の状態が障害児福祉手当の要件にも該当する場合、特別児童扶養手当と併給できるケースがあります。たとえば、特別児童扶養手当2級(月3万8930円)と障害児福祉手当(月1万6560円)を併給した場合、年間の受給総額は約66万5880円になります。さらに医療費助成や税控除を加えれば、家計改善効果は年間で数十万円規模になることも十分あり得ます。

◇  ◇

これらの制度に共通するのは、「申請しなければ1円も受け取れない」という点です。「うちの子は対象になるだろうか」と迷ったら、まず住所地の市区町村の福祉窓口(障害福祉課・子育て支援課など)に相談してみてください。手帳の有無にかかわらず、診断書があれば審査を受けられる制度も多くあります。家計の不安を一人で抱え込まずに、使える制度を最大限活用することが、子どもの豊かな育ちにつながる第一歩です。
※本記事の手当金額は2026年4月以降の金額です。所得制限や認定基準は年度により変更される場合があります。最新情報は必ずお住まいの市区町村窓口または各省庁の公式サイトでご確認ください。

【出典】
こども家庭庁「障害福祉サービスの利用者負担」
厚生労働省「生活のしづらさなどに関する調査」
厚生労働省「令和7年度の年金額改定について」
こども家庭庁「障害児福祉手当について」

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症2型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。    

(まいどなニュース/もくもくライターズ)