最近は特殊詐欺のニュースが流れる影響もあり、銀行窓口で大きな金額を引き出す際に細かく事情を聞かれたという声も聞かれます。これまでとくに意識せずに引き出しができていた人ほど、戸惑いを隠せないでいるようです。
50代の主婦Aさんも、その1人でした。家のリフォーム費用としてまとまった現金を用意する必要があり、銀行の窓口で500万円の引き出しを申し込んだところ、行員から「何に使うんですか」と尋ねられたのです。
これまでそんなことを聞かれたことがなかったAさんは、驚きのあまり「ちょっと家のことで」とあいまいに回答します。すると行員からは、さらに具体的な使い道を尋ねられることになりました。
ほんの少しの時間でお金を引き出す予定だったAさんは、しつこく質問してくる行員の対応をすることで、1時間以上も銀行で待たされてしまいます。
何とかお金を引き出せたものの、Aさんは「自分のお金を引き出すだけでなぜこんなに質問されなければいけないの?」と憤りを覚えます。
では、もしもAさんが行員に質問された際に、回答を拒否した場合はお金を引き出せないのでしょうか。それとも世間話程度に聞かれているだけで、この回答とお金を引き出す行為は無関係だったのでしょうか。
元銀行員のファイナンシャルプランナーである橋本ひとみさんに話を聞きました。
■答えを拒んでも一律に拒否されるわけではない
ー銀行で大きな金額を引き出す際に「使途」を聞かれるのはなぜですか?
背景には2つの流れがあります。1つは、犯罪収益移転防止法にもとづく取引時確認です。この法律では、200万円を超える現金の受け払いを伴う取引などの際に、金融機関が本人確認に加えて取引の目的や職業などを確認することが定められています。
500万円の引き出しはこの基準を超えるため、使途を尋ねられること自体は法律にのっとった対応です。
もう1つは、各銀行が特殊詐欺被害を防ぐために独自に行っている声かけや聞き取りです。警察当局からの要請を受け、高額の現金引き出し全般に対して確認を強化している金融機関も多く、法律の要件とは別の対応として定着しています。Aさんが受けた丁寧な質問は、この両方が重なった結果であったと考えられます。
ー使途を答えなかった場合、引き出しを拒否されることはあるのでしょうか
答えを拒んだだけで一律に即拒否になる、ということは通常ありません。
実務では、事情や不審点の有無に応じて対応が判断されます。説明に不自然な点があったり、詐欺の疑いが拭えない場合は、警察に連絡が入ることもゼロではありません。Aさんのように本人が落ち着いて大まかな事情を伝えられれば、引き出し自体を断られることはほとんどないでしょう。
ー使途について、どこまで具体的に答える必要があるのでしょうか
詳細まで話す必要はなく、リフォーム費用や家族のためといった大まかな目的が伝われば十分なケースがほとんどです。ただし、電話で指示されたような不自然な点があったり、説明にあいまいさが目立ったりすると、行員はより踏み込んで質問することがあります。
これは詐欺被害を未然に防ぐための確認であり、お客さま自身を疑っているわけではないと理解しておいてほしいです。
◆橋本ひとみ(はしもと・ひとみ) 元銀行員/ファイナンシャルプランナー
銀行勤務12年を経て、現在は複数企業の経理代行をおこなう。法人営業や富裕層向け資産運用コンサルティングの経験に加え、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士の資格を持つ。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
























