地方の印刷会社で事務を担当して12年になる55歳女性のAさん。彼女はパートとして入社し、3年目に正社員となりました。伝票整理から給与計算、来客対応まで幅広くこなし、社長からは「Aさんがいないと会社が回らない」と言われるほど頼りにされています。
そんな彼女が会社の異変を知ったのは、取引先の営業担当からの「御社、大丈夫ですか?後継者を探しているという噂を聞いたので」という言葉でした。動揺したAさんは社長に確認すると、「実は数年前から後継者が見つからず、今年度中の廃業も選択肢に入れている」と打ち明けられたのです。
Aさんは数年前に夫を亡くし、現在は年金生活の実母と2人暮らし。年金だけでは実母の介護費用を賄いきれず、Aさんの収入が生活の柱になっています。すぐにでも次の勤め先を探さなければなりませんが、体力的に長時間の立ち仕事が難しいこともあり、Aさんは今後の働き方に頭を悩ませていました。
すぐにでも転職に向けて動き出したいAさんは、どのように転職活動を進めていけばいいのでしょうか。キャリアコンサルタントのYukoさんに話を聞きました。
■中高年の再就職は?
ー55歳・事務職経験豊富な女性の再就職市場での実態を教えてください。年齢はどれほどハンデになりますか?
正社員の事務職を目指す場合、55歳という年齢は厳しい条件になります。求人には年齢を書けない決まりですが、面接では「あと何年働けるか」を考えて、若い人を選びたがる会社もあります。
ただし、地方や小さな会社では人手が足りず、年齢を気にしないところも増えています。経理や労務、総務を一人でこなせるスキルは、小さな会社ほど喜ばれます。
大事なのは年齢よりも今すぐ何ができるかを伝えることです。55歳という年齢から、企業側は会社で使用するシステムやツールに対応できるか、年下の上司や同僚も多い組織に柔軟に馴染めるかを懸念するかもしれません。
そのため、正確なPCスキルや柔軟な対応力、謙虚で柔軟な姿勢が伝えられれば十分アピールになります。
ー体力的な不安がある中で、次の仕事を選ぶ際は何を基準にすればいいでしょうか?また、今の事務職の経験にこだわるべきか、他の職種も視野に入れるべきかも教えてください。
事務職の経験を活かせる仕事を軸に探すのが現実的だと思います。もちろんご本人が他の仕事に関心があるなら挑戦するのも一手ですが、こだわりがないのであれば、これまで積み重ねてきた経験を無駄にしない選択のほうが再就職もスムーズです。
就職先の不安から、介護などの人手不足の業界に目が向きがちですが、体を動かす場面や長時間の立ち仕事が多いケースもあり、体力に不安のある方は慎重に選ぶ必要があります。
1日も早く再就職したくて焦る気持ちも容易に想像できますが、その仕事を無理なく長期的に続けられそうか、という観点も大切です。
ー再就職に向けて取り組むべきことを教えてください。
今すぐ始められる行動が2つあります。1つめは、ご自身のスキルや職務経歴の棚卸しです。「何を」「どのくらいの量」「どんな方法で」「何に工夫して取り組んだのか」など、具体的な数字や内容を書き出してみましょう。
当たり前にしてきたことが強みである場合も多いです。信頼できる人のサポートを受けながら行うことをお勧めします。
2つめが、最寄りのハローワークへの相談です。キャリアコンサルタントへのキャリア相談や、履歴書・職務経歴書の添削、求人応募段階では面接対策など、幅広いサービスを無料で受けることができます。
万が一廃業となっても、失業給付や職業訓練まで一括して頼れる窓口です。焦って合わない求人に飛びつくより、まず今のスキルを可視化し、周囲のサポートを受けながら進めましょう。
◆キャリアコンサルタントYuko 国家資格キャリアコンサルタント
「自分らしいキャリアとは何か?」新卒時代からずっと抱えてきた問いの答えを見つけるべく、2021年 国家資格キャリアコンサルタントを取得。現在も民間企業で人事労務に従事しながら、キャリアへの向き合い方を等身大の言葉でシェアし続けている。3歳娘を育てる一児の母。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)























