1年に1度、7月7日に開かれるコンクールのみで僕らは出会う(makaさん提供)
1年に1度、7月7日に開かれるコンクールのみで僕らは出会う(makaさん提供)

本人の想いを縛るものは、決してコンクールの結果だけではないようです。漫画家・makaさんの作品『僕らはピアノで繋がっている』は、ピアノを通じた男女の想いを描いた作品です。同作は『10年間1度も天才に勝てなかった凡人ピアニストの話』としてX(旧Twitter)に投稿されると、約5600のいいねを集めています。

毎年7月7日にとあるピアノのコンクールが開かれ、星月彦と織姫明日菜は長年参加していました。しかし、10年近く参加しても金賞を取るのはいつも明日菜で、月彦は銀賞しか取れません。高校3年生になった月彦は、今年のコンクールでピアノを辞める決断をしました。

明日菜とはじめて出会ったのは幼稚園のころでした。月彦はクラスで1番ピアノが上手かったのですが、明日菜の演奏を聴いて『ピアノの天才』だと衝撃を受けます。ピアノを大人になっても続けられるのは明日菜のような天才だろうと考えつつ、月彦は高校卒業後の進路希望を考えていました。

そして7月7日、月彦にとって最後のコンクールが幕を開けました。月彦の番となり壇上へ向かっていたところ、後ろから「織姫さんもピアノやめるんだっけ」という言葉が耳に入ります。

演奏がはじまり、最初は相手がどこで何をしようと関係ないと思っていた月彦。しかし、徐々に本心がピアノに乗り移り「なんでお前がピアノをやめるんだよ!」と心の叫びを音に乗せます。月彦は、自分を何も持っていない凡人だと思っていました。それでも明日菜に負けない演奏をするため、今日までピアノを続けてきたのです。今ここで明日菜を引き止めるため、月彦はありったけの魂を込めて演奏しました。

魂の音色はホール中に響き渡り、月彦の母は思わず涙をこぼします。その後入れ替わりで、明日菜の番がやってきました。その音色は星が輝くように美しく、月彦は自分が生まれ変わったかのような感覚を覚えます。

月彦は幼いころ、明日菜の演奏を聴いて勝てるわけがないと感じました。でも本当はずっと勝ちたかったのです。自分も本当はピアノが大好きだったんだと思い出した月彦は、バックステージで溢れんばかりの涙をこぼします。

結局、今年のコンクールも明日菜が金賞で月彦が銀賞という結果に終わります。ほとんど会話を交わすこともなく、そして住んでいる場所も、通っている学校も知らない彼らでしたが、確かにピアノでつながっていたのでした。

読者からは「2人の関係性が最高すぎた」「心がピアノでつながっているの美しすぎる…」などの声が寄せられています。そこで、作者のmakaさんに話を聞きました。

■お互いに「一緒にピアノのコンクールに出ていた子」くらいの感覚だったものの…

-同作を描いたきっかけについて教えてください

天才と凡人の話を描こうというのが初めで、女子の天才と男子の凡人を描くために男女で同じ目標に向かうものってなんだろうと考えたところ、ピアノのコンクールという題材を思いつきました。

-明日菜にとって、月彦はどのような存在だったとご想像しますか

「一緒にピアノのコンクールに出ていた子」くらいだったと思います。自分の人生に必要不可欠なくらい大切な存在などではないです。私が凡人で、月彦側に共感して描いていたので、明日菜の考えってあまりわからないんですが、明日菜にとって月彦がピアノを止めるなら自分もやめる程の存在ではあったんだよなぁと思います。

-2人の今後がとても気になる作品でした!

ありがとうございます。自分の読切のなかでも続きを描きたいと強く思った作品です。ピアノや音楽が人生の主軸になる人の生き方ってどんなものなんだろうと思います。2人が楽しくピアノを弾ける未来があって欲しいと思いますね。

(海川 まこと/漫画収集家)