年々増加しているSNS型投資詐欺。その手口は巧妙で、一度信じ込んでしまった被害者を説得するのが困難だといいます。以下のエピソードは、そんなSNS型投資詐欺被害者の説得にあたったAさんの体験談です。
ある日、中間管理職のAさんのもとに「Bさん(60代女性)が投資詐欺に遭っているようだから止めてほしい」と同僚から相談が舞い込みました。事情を聞くと、発端はBさんがLINEで突如、見知らぬ投資グループに招待されたことだったといいます。そのグループには実業家の堀江貴文さんを名乗る人物がおり、参加者たちが「今日も数十万儲かりました!」と連日のように利益を報告し合っていたそうです。
初孫のために少しでもお金を残したいと考えていたBさんはこれをすっかり信じ込み、指示されるがまま専用アプリに約200万円を入金してしまいます。その後、アプリ上で順調に増え続ける数字を見て、Bさんは完全に舞い上がっていました。ところがある日、利益を引き出そうとすると「出金するには保証金として50万円が必要」と要求されます。
出金できないことに違和感を覚えたBさんが職場で相談すると、周囲は一斉に「絶対に投資詐欺だ」と止めに入りました。しかしBさんは「嘘よ、なんとしてでもお金を取り返さなきゃ!」と逆にパニックに陥ってしまいます。
そこでAさんが間に入り「直接会ったこともない相手を信用してはいけない」「これ以上振り込んでも絶対にお金は戻ってこない」と客観的な事実を並べて再三説得を試みました。しかしBさんは「私には堀江貴文さんがついているのよ」「孫のためにお金を取り戻さないと!」と感情的になるばかりで、まったく聞く耳を持ちません。
最終的にAさんたちが特殊詐欺相談ダイヤルへ電話をつなぎ、警察官から直接「それは詐欺です」と説明されてようやく洗脳が解けました。しかしその説得の間に、Bさんはお金を取り返したい一心で知人から借金をし、50万円を振り込んでしまっていたのです。
なぜBさんのように、周囲の人間がいくら止めても引き返せなくなってしまうのでしょうか。また、Aさんの立場に置かれた場合、どのように説得を試みるとよいのでしょうか。元警察官で、現在は警察官志望者向けに『やまよし教場オンラインスクール』を運営する、やまよしさんに話を聞きました。
■「絶対に詐欺だ」と頭ごなしに否定するのは逆効果
--なぜBさんのように周囲が説得しても聞く耳をもたず、パニックに陥ってしまうことがあるのでしょうか?
被害者が説得に応じない原因は、「自分は騙されていない」という思い込みと「投資したお金をどうしても取り戻したい」という焦りだといえるでしょう。SNS型投資詐欺は、時間をかけて巧妙に信頼関係を築くため、被害者は犯人を味方だと錯覚しています。そのため、周囲から客観的な事実を突きつけられても、騙された現実を受け入れられずパニックに陥り、さらなる要求に応じてしまう悪循環に陥るのです。
--周囲の人が詐欺に遭った場合、どのように説得するとよいですか
「絶対に詐欺だ」と頭ごなしに否定するのは逆効果です。被害者が意固地になり、犯人に一層依存してしまう可能性があります。まずは「お孫さんのためを思ってのことですよね」と相手の感情に寄り添い、孤立を防ぐことが重要です。
そのうえで、相手がやり取りをしているSNSやLINE、ウェブサイトなどを一緒に見てあげてください。「私でもすぐには判断できないから、念のため一緒に警察へ相談してみましょう」と、同じ目線に立って伝えることが有効です。当事者同士で論破しようとせず、第三者である専門機関へ誘導する姿勢を大切にしてください。
--具体的には、警察にはどのように相談するのがよいでしょうか?
警察相談ダイヤル(#9110)などの電話相談も1つの手ですが、パニックに陥っている方は電話で話すこと自体に不信感を抱いているケースも少なくありません。そのため、可能であれば交番や警察署へ直接一緒に出向くことをおすすめします。対面での相談であれば疑いの余地がなく、これ以上説得力のある対応はありません。その場で被害届を提出できるほか、今後の対応についても直接アドバイスを受けることができます。
説得する側は、だまされてしまった方に対して寄り添う姿勢を忘れないことが大切です。大事な人を守るためにも、自分たちだけで抱え込まずに迷わず専門家を頼ってください。
◆元警察官やまよし 元警察官で、現職時代は主に交番や刑事として勤務。
現在は、その経験を活かし警察官志望者向け教室「やまよし教場オンラインスクール」(面接対策など)を運営。7年間で5,000人以上をサポートし(2026年1月現在)、全都道府県警察へ合格者を輩出している。主にYouTubeなどでの情報発信のほか、メディア出演や取材協力などもおこなっている。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)























