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(4)ネットワーク化がカギ 仮設工場の期限が切れる
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 仮設住宅の撤去が急ピッチで進む一方で、もう一つの「仮設」が五年の入居期限を迎えようとしている。

 震災後、神戸市内七カ所に建った仮設工場。被災し、工場を失った製造業百五十七社が操業を続ける。仮設後をどうするのか。私たちは工場を訪れるたび、経営者の思いを聞いてきた。

 退去時期をにらみ、集団移転を実現させようと勉強していたグループがあった。神戸市西区のハイテクパーク仮設工場に入る機械金属加工業者らで作る「神戸ハイテック協同組合設立準備会」だ。九六年秋、三十社で発足した。その後、八社にまで減り、この春、活動を休止した。

 「参加企業が減るほど一社当たりの共有部分の負担が増える。ここまで景気が悪くなると、とても無理な話です」。まとめ役だったユニオン鉄工の経営者、藤井輝昭さんは遊休状態の機械に目をやりながら話した。

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 「震災の時を底と思えば、過去のサイクルからみて五年後には仕事が増えると信じていた。今思うと、震災直後が一番ましだった」

 神戸市長田区のインナー第四仮設で金属加工業を営む小山隆司さんの場合は、自宅兼工場の土地が区画整理の網にかかっている。今も換地のめどさえ立っていない。

 「五年もあれば、戻れると思ったんやけど。せめて家が建つまでおらしてくれたらええのに」

 五年の期限。神戸市産業振興局の担当者は「抽選で仮設工場に入れなかった人もいれば、仮設を出ていき、自力で頑張っている人もいる。それを考えると、特定の事業者にだけ支援を続けるわけにはいかない」と、公平の論理で答えた。

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 神戸市は、移転先の決まらない業者の受け皿として、ハイテクパーク仮設工場を本設化するほか、神戸市兵庫区に建設した市営復興支援工場への移転を促している。

 だが、移転後の家賃は仮設工場の数倍程度になる。県信用保証協会の保証付き災害復旧融資を受ける約三万七千件のうち、約一五%は元金返済を猶予される据え置き期間の延長を利用し、苦境をしのいでいる。家賃アップにこの返済が加われば、各社一カ月当たり数十万円の負担増となる。移りたくても、まだ体力がない。

 中小企業復興を追跡調査する森靖雄日本福祉大学教授は「五年たったから家賃を一気に上げるのではなく、段階的に上げながら被災企業の体力を高めていく。ネットワークづくりを含めたこうした復興支援の仕組み、施策が必要だったのではないか」と指摘する。

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 神戸市兵庫区に三棟建つ市営復興支援工場では、新たな動きが出ていた。来春には、主に機械金属業者を受け入れる新棟も完成する。その業者の移転を心待ちにする神戸プラスチック社長の田渕信幸さんに会った。

 「工場が多く集まるほど事業のチャンスが増える。近くに外注できる先があれば、コストも下げられる」

 田渕さんは最近、入居企業の一社から塩ビ加工品の生産を受注した。互いを知ることで、ここから仕事が広げられる。震災の逆境をバネに、そう思い始めた。

 月末には、神戸市産業振興財団の力を借り、工場主六人で経営研究会を発足させる予定だ。

 来春、入居企業は百社近くに増え、自治体が整備した貸し工場としては日本最大規模になる。この集積を生かさない手はない。

1999/11/20
 

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