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キッチンカーの前でポーズを取る肥田真輝さん(左)、りささん=淡路市佐野
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キッチンカーの前でポーズを取る肥田真輝さん(左)、りささん=淡路市佐野

 「特別なことを求めていない。普通に生きたいだけ」。心と体の性別が一致しないトランスジェンダーのカップル肥田真輝(まさてる)さん(39)と、りささん(39)が、動画配信で思いを伝える。

 始めたのは昨年2月。りささんが、母方の姓を使い、「河上りさ」として活動する。構成はシンプル。テーマを設けず、思うままに会話する。

 全国の40人が出演した。暮らし、趣味、恋愛など、感じていることを飾らず言葉にした。「一人一人が違う存在として生まれてきた。私たちも、皆さんも」

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 大阪府出身のりささんは3人兄弟の長男。幼少から「自分は男の子じゃない」と感じた。ただ、「それが何なのか分からなかった」。

 高校生の頃、テレビで活躍するニューハーフを見た。「自分の道はこれ」。卒業してすぐ、ニューハーフの店で働き始めた。家族とは数年間、連絡を取らなかった。

 21歳、性別適合手術を受けた。24歳、戸籍の性別を変えた。本当の自分で生きる喜びを感じ、出産できない女性としての不完全さも思い知った。

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 真輝さんは、淡路市佐野の漁師の長女。子ども時代、ランドセルや服の色に違和感を持った。「なぜ好きな色を選べないのか」

 一人で習字道具を買い、黒いケースを持ち帰ったことがある。「親に怒られた」。男は男、女は女と、受け入れてやりすごした。

 スポーツ推薦で神戸の女子高へ。おぼろげだった意識が徐々にはっきりした。「自分は人と違う」。就職し、30歳で性別適合手術を受けた。家族に告白した。

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 6年前、2人は出会った。きっかけはマッチングアプリ。メールの関係だったが、性別変更で通っていた大阪の病院で偶然、顔を合わせ、意気投合した。

 真輝さんの実家で暮らしている。真輝さんは介護関係の仕事に就き、りささんは焼き芋をキッチンカーで販売する。

 小冊子「トランスジェンダーのリアル」も発行した。当事者の手記を載せた。全国の教育機関などから引き合いがあり、増刷を重ねる。「淡路島内のトランスジェンダーと家族が声を上げ、相談する場」をつくろうと準備を進めている。「もっと普通に。そうなれば社会は変わる」と、信じて。(内田世紀)

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