ウシガエルの駆除と堆肥化に奮闘する篠山東雲高校の(左から)林彩加さん、山上琴音さん、大山愛恵さん、高仙坊愛峰さん=丹波篠山市北新町
ウシガエルの駆除と堆肥化に奮闘する篠山東雲高校の(左から)林彩加さん、山上琴音さん、大山愛恵さん、高仙坊愛峰さん=丹波篠山市北新町

 ブォー、ブォー。夏から秋にかけての夜、篠山城跡(兵庫県丹波篠山市)の堀で、特定外来生物ウシガエルの低い声が辺り一帯に響き渡る。堀の生態系と静かな環境を守るため、篠山東雲(ささやましののめ)高校(同市福住)の女子生徒4人が駆除活動に乗り出した。カエル好きの彼女たちは「命を無駄にしない」と、捕らえた個体を堆肥にする研究も同時に進めている。(金 慶順)

 9月初旬の篠山城跡東馬出堀。水草の間にたくさんのウシガエルが跳ね、オタマジャクシがうじゃうじゃ泳いでいる。「鳴き声がうるさくて夜も眠れん」。近くの女性がこぼす。そこへ同校3年の山上琴音さん(17)と後輩3人が、釣りざおを持って集まった。カエル型のルアーを堀に垂らして動かすと、すぐにウシガエルが寄ってきた。

 「動くものを追い掛けて何にでも食いつきます。釣り上げるのは難しいけど…」と2年の大山愛恵(まなえ)さん(17)。開始15分。ルアーがしっかりくわえ込まれた。「来た!」。力いっぱいさおを引くと、体長15センチほどの個体が釣り上げられた。「大きい子や」「いっぱい堆肥が作れる」。3人が駆け寄って喜んだ。

 捕獲作業は、外来生物対策に取り組む市の許可を得て今年6月に始まり、今回が5回目。最初は網を仕掛ける方法だったが、8月から一本釣りで行う。

 活動は山上さんの課題研究として始まった。同市北東部の大芋(おくも)地区に住む山上さんは、トノサマガエルやアマガエルなどいろんな生き物の鳴き声を聞きながら育ったが、いつからかウシガエルの声しか聞こえなくなった。ところが池を多様な生き物が生息する「ビオトープ」として整備すると、多彩な鳴き声が復活したという。「環境のバランスを整えれば共生できるのでは」と気付いた。

 山上さんは生き物が大好き。「できれば駆除したくない」と感じるが、ウシガエルが他の生き物を食べ尽くす前に一定の駆除も必要だと思った。そして「駆除するからには有効活用したい」と堆肥化の研究を始めたという。

 堀で約3時間かけて大小6匹を釣り上げると、4人は高校へ。「ごめんなさい」と手を合わせてから、はさみでウシガエルの死骸を細かく切り刻んだ。最初はカエルが苦手だったという2年の高仙坊愛峰(こうせんぼう・あまね)さん(17)も「ここが関節かな」と観察しながら淡々と作業。まだちょっと苦手な林彩加さん(17)は記録係だ。

 刻んだ死骸はEM菌と混ぜてコンポストへ。実用化にはまだまだ量と時間が必要という。

 山上さんは8月、奈良県であった近畿学校農業クラブ連盟大会で研究を報告し、意見発表部門で優秀賞に輝いた。「ウシガエルと在来ガエル、命と命の共存を目指して」。発表はそう締めくくられている。

【特定外来生物】 もともと日本にいなかった外来生物のうち、生態系などに被害を与える恐れがあるものを、環境省が外来種被害防止法に基づいて指定している。今年4月時点で約140種。同省によると、ウシガエルは食用、繁殖用として米国から持ち込まれ、ほぼ日本全国に広がっている。捕食性が強く、昆虫やザリガニのほか、鳥類、魚類まで幅広い小動物をえさとする。