幼い命を守れなかった。神戸市の担当者は「亡くなったのは非常に残念」と悔しさをにじませた。同市西区の草むらで近くに住む穂坂修ちゃん(6)の遺体が見つかった事件を受け、市は23日に会見し、4月に修ちゃんの体から複数のあざが見つかっていたことを明かした。自宅付近では、修ちゃんを悼んで花束を手向ける人もいた。
■養育に不安
会見には、市こども家庭局の丸山佳子副局長、市こども家庭センター(児童相談所)の高橋顕副所長が出席。祖母への監禁、傷害容疑で、きょうだい3人とともに兵庫県警に逮捕された修ちゃんの母親、沙喜容疑者(34)との関わりは、修ちゃんを妊娠中から始まっていたことを説明した。
沙喜容疑者は母子健康手帳を受け取りに西区役所を訪ねた際、「養育に不安がある」と相談。保健師が対応に当たった。修ちゃんは0歳から保育園に通い、園が見守りの中心となった。
異変は今年初めごろ起きた。2月には保育園を休みがちになり、3月の登園は5日間だけ。久しぶりの登園だった4月20日、右肩と尻のあざが確認された。理由を尋ねた園職員に、修ちゃんは「誰かからされた」などと答えたが、名前は挙げなかった。翌21日が最後の登園になった。
■警察と情報共有せず
園から報告を受けた区役所職員が同24日に家庭訪問。修ちゃんには会えず、沙喜容疑者と祖母はあざに「心当たりがない」と口をそろえたという。丸山副局長は「虐待の疑いはゼロではなかったが、養育状況を見極めようとした」。県警とも情報共有しなかった。
職員は5月1日に再度訪問し、修ちゃんと初めて面会。肩のあざは消えていた。沙喜容疑者は「育てにくさがある」と話し、修ちゃんの一時保護を持ちかけた。翌2日、こども家庭センターで修ちゃんを保護する約束だったが現れず、職員が連絡を取ると、祖母が「子どもが嫌がっている」と保留。大型連休明けの9日も、祖母は「子どもが落ち着いている。一時保護は大丈夫」と話したという。
6月1日の区役所職員の家庭訪問が最後の接触だった。あざの確認後、職員が修ちゃんに会ったのは一度のみ。丸山副局長は「面談は何度も求めたが、断られていた。どうにかして会えないか検討は続けていた」とし、「本当に胸が痛む。対応に検証が必要と考えている」と話した。
■にじむ後悔
一家が暮らしていた集合住宅周辺では23日も県警による捜査が続いた。沙喜容疑者の知人という40代女性は家族らと住宅を訪れ、グミやジュース、花束を手向けて静かに手を合わせた。
修ちゃんらと最後に会ったのは昨夏。共通の知人らと食事した。親子に変わった様子はなかったが、沙喜容疑者について「一人で抱え込んでしまう。悩みがあったら打ち明けてほしかった」と後悔をにじませる。
女性は「修ちゃんは元気でかわいい子。幼い命が失われたことはかわいそうでならないし、(沙喜容疑者が)逮捕されたことはまだ信じられず、複雑な気持ち」と声を震わせた。