神戸地裁=神戸市中央区橘通2
神戸地裁=神戸市中央区橘通2

 神戸市長田区で昨秋に不審火が相次いだ事件で、現住建造物等放火などの罪に問われた住所不定、無職の男(37)に対する裁判員裁判の初公判が10日、神戸地裁(松田道別裁判長)であった。男は起訴内容を認め、「どれだけ謝っても許されないことをした。申し訳ないと思います」と謝罪した。

 起訴状などによると、男は昨年11月15日夜、同区内の事務所兼倉庫や店舗兼住宅など3カ所で、付近にあった段ボールや布などにライターで火を放ち、建物の一部や簾などを焼損させたとされる。

 冒頭陳述で検察側は、男が借金返済や生活費支払いなどに困っていたが、ツイッターで知り合った「シャサ」という人物と性的関係を持つために計10万円を支払ったと説明。実際には会えず、相手が返金に応じないことから「鬱憤を募らせ、晴らそうと放火を考えた」と指摘した。

 被告人質問で男は、詐欺に遭って生活費がほぼ尽きた中で「家族に迷惑をかけず、お金に追われない方法として死ぬことを考えた。自殺をする勇気はなく、捕まれば(問題が)解消できると思った」と述べた。弁護側は、男が事件直後に職務質問を受けた際、犯人と名乗り出なかった理由を尋ね、「気持ちはあったが、捕まるのが怖かったのだと思う」と話した。