神戸地裁=神戸市中央区橘通2
神戸地裁=神戸市中央区橘通2

 神戸市垂水区の集合住宅で5月、同居する母親の首を絞めて殺害したとして、殺人罪に問われた同区の無職の男(69)の裁判員裁判の判決公判が28日、神戸地裁であった。松田道別裁判長は懲役3年(求刑懲役5年)を言い渡した。

 判決などによると、男は5月30日午後7時40分~11時40分ごろ、自宅で母親=当時(91)=の首を絞めて窒息死させた。犯行後、男は明石市の大蔵海岸で包丁を手に首や手首から血を流した状態で見つかり、県警の調べに「介護に疲れた」などと供述していた。

 松田裁判長は判決理由について、殺害時に母親が抵抗していたことなどに触れ「一方的に命を奪ったことは、人命を軽視していると言わざるを得ない」と指摘した。

 一方で、認知症の母親が昼夜逆転の生活を送るようになるなど症状が悪化し、男は家族への経済支援にも迫られ、貯蓄がほぼ底をつくような状況になっていた事情に言及した。

 また兄弟の死も相次ぎ、犯行の数年前には妻が病死したことに触れ、「相当に追い詰められていた」と説明。「母親の面倒を見る人がおらず、被告なりに周囲のことを思い犯行を決意した。同情の余地は大きい」と述べた。