兵庫県稲美町で2021年11月、民家が全焼し小学生の兄弟2人が死亡した放火事件で、殺人と現住建造物等放火の罪に問われた兄弟の伯父、松尾留与被告(53)は25日、神戸地裁姫路支部(佐藤洋幸裁判長)の裁判員裁判の初公判で「(間違い)ありません」と起訴内容を認めた。
検察側冒頭陳述によると、松尾被告は事件当時、妹夫婦とその子で小学6年の松尾侑城君(12)、同1年の眞輝君(7)と5人で暮らしていた。被告は普段、1階で過ごし、2階に住む妹家族との会話はほとんどなかったという。
検察側は、被告は妹夫婦が設置したカメラで行動を監視されていると考え、怒りや不満を募らせたと動機を指摘。「妹夫婦を最も苦しめる方法として、子ども2人を殺害することを決意し、夫婦が不在の間に火を付けた」と計画的犯行だったとの見方を示した。
一方、弁護側は、被告に軽度の知的障害があるとして「量刑を考える上で考慮されるべき」と主張。カメラで監視されていたことなど家庭内の状況を説明し、「妹夫婦から人として扱われていないと感じ、事件を起こすまで精神的に追い詰められていた」と述べた。
起訴状などによると、松尾被告は21年11月19日深夜、同町岡の木造2階建ての自宅で、押し入れ内の布団にガソリンをまいた上に火を放って全焼させ、就寝中だった侑城君と眞輝君を殺害したとされる。
閉廷後、亡くなった兄弟の父親が報道陣の取材に応じ、「被告から反省の態度が全く感じられず、憤りを通り越した」と話した。