「神戸ワイン」を製造・販売する神戸市の外郭団体・神戸農政公社(同市西区)などは15日、ワイン事業を白鶴酒造(同市東灘区)に譲渡する方向で協議を開始すると発表した。1984年の販売開始から約40年が経過し、老朽化した醸造設備などへの新規投資が困難になっていた。
同公社はこれまで、ワインの瓶詰めを委託したり、純米酒と梅酒、ブランデーをブレンドした「梅ブランデー」を共同開発したりするなど、白鶴との協力関係を深めていた。
譲渡額や醸造設備の継承など詳細は今後協議する。合意できれば今年秋に契約を結び、同12月以降に白鶴が販売を始め、2025年度以降は製造も担う予定。市内の生産者からのワイン用ブドウの買い取りは同公社が引き続き担当する。
神戸ワインは、同公社の前身「神戸みのりの公社」が1984年10月から販売を開始。市内の農家からブドウを買い取り、97、98年度にはワインブームに乗って販売量が100万本(720ミリリットル換算)を超えた。
しかし、その後は減少し、2000年代初頭には在庫が膨らみ経営難に。耕作面積を減らすなどして経営再建を進めていた。
近年は新型コロナウイルス禍による販売減で赤字が続いたが、22年度には21万7千本を売り上げ、コロナ禍前の9割弱まで販売量が回復。商品の値上げも奏功し、23年度は収支均衡が視野に入っているという。
現在、同市西、北区の契約農家や神戸ワイナリー(西区)内の畑計約40ヘクタールで栽培するブドウを原料とする。神戸ワインは国産ブドウのみを使って国内で生産した果実酒だけが表示できる「日本ワイン」で、国内外から注目を集めている。
神戸農政公社の福島国武常務理事は「民間の力で神戸ワインを高みに押し上げてほしい」と期待する。白鶴酒造の森伸夫執行役員は「価格転嫁や高付加価値化、効果的なPRなどで、長年培われてきたブランドを伸ばしていきたい」と話した。(三宅晃貴、大盛周平)