改装で設けた「海と山を感じる暮らし」がテーマのフロアで、館の5年間を振り返る神戸阪急の杉崎聡店長=神戸市中央区小野柄通8
改装で設けた「海と山を感じる暮らし」がテーマのフロアで、館の5年間を振り返る神戸阪急の杉崎聡店長=神戸市中央区小野柄通8

 今月5日で、そごう神戸店から屋号を変えて丸5年を迎える神戸阪急(神戸市中央区)。一帯では三宮再整備が進み、ライバルの大丸神戸店も売上高を伸ばす。周辺施設の競争力アップを意識し、阪急側は「神戸」と「百貨店」にこだわった店づくりを進めてきた。杉崎聡・神戸阪急店長(54)=阪急阪神百貨店執行役員=は「エリア全体の魅力アップに貢献することで、必要とされる店であり続けたい」と語る。

 ■ようやく「阪急」に

 「昨年10月に改装オープンし、この1年がようやくスタートの年と言える」。杉崎店長は実感を込める。

 2019年10月に華々しいセレモニーで船出したものの、「中身は期待に十分に応えられていなかった」。杉崎店長が西宮阪急から転じた翌20年春はコロナ禍のさなか。「『いつ変わるの、ずっと一緒やん』と、お叱りの声もいただいた」と話す。

 売上高も伸び悩んだ。そごう神戸店時代の16年度は452億円。エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング傘下となった18、19年は400億円前後で推移し、20、21年度はコロナ禍で300億円を割り込んだ。

 改装計画もコロナ禍でずれ込んだが、ようやく22年3月に着手。同8月には「都市型百貨店」をテーマに新館を刷新し、若い世代の来店が増えた。23年には、自主編集コーナーを核に、フロア全体で「神戸らしい暮らし」を提案する売り場を本館4~6、8階に順次、設けた。

 同年10月にリニューアルオープン。「冬のセールを境にぐっと認知が進み、今年4月以降、売り上げ増という形となって表れている」と杉崎店長。売上高は22年度に332億円、23年度に404億円と順調に伸び、24年度は440億円を見込む。

 ■地域と歩む

 23年6月、H2Oは、神戸市とまちづくりに関する包括連携協定を結んだ。協定に基づいて、神戸阪急横の屋外に今年8月、歩行者の休憩スポットが設置され、同9月には周辺のライトアップが始まった。

 「僕たちは『百貨』を組み合わせ、暮らしの豊かさを提案してきた。今後は行政や周辺施設と連携し、自分たちの提案力や編集力を、エリアでも発揮していく」と杉崎店長。開発が進むウオーターフロントと三宮との往来の活発化へ、フラワーロードのにぎわいづくりについても構想を描く。

 また、改装で中四国からの来店客が増えていることにも着目。「館内にある四国ゆかりのショップも生かしながら、瀬戸内と神戸との回遊にも知恵を絞りたい」と話す。

 ■存在感どう示す

 都市部の百貨店ではコロナ後、インバウンド(訪日客)がけん引し、高額品が伸びている。神戸阪急でも「インバウンドが大きな売り上げの塊になってきた」という。

 一方、ライバルで地域一番店の大丸神戸店の伸びも大きい。23年度の売上高を15年ぶりに900億円台へ乗せ、1千億円もうかがう勢いだ。三宮では、JR西日本の30階建て新ビルも29年度の開業を予定する。

 これらの動きに対し「脅威ではあるが、改装で独自性を磨いてきた。インバウンドを含め、神戸は今以上に人を呼び込む潜在力がある」と杉崎店長。「エリアの集客力アップに貢献し、その結果、神戸阪急にも足を運んでもらえればいい」とする。

 改装で内部が整い、残る課題は変わらないままの外観だ。「三宮が大きく変わる中、このままでいいのか、とは神戸市民の一人としても思う」と杉崎店長。しかし、建て替えに向けた具体的な方向性は現時点ではない。(広岡磨璃)

◇「誕生祭」を22日まで開催

 神戸阪急では、5周年を記念した「誕生祭」を22日まで開いている。

 9階催し場では、神戸生まれのイラストレーターわたせせいぞうさんの作品展を14日まで開催。代表作「ハートカクテル」をはじめ原画などを展示し、5日午後1時からサイン会を開く。

 同じ9階では7日まで、兵庫の蔵元19社が集まる「HYOGO SAKE EXPO」が開催中。清酒販売のほか、明石焼や姫路おでんなど兵庫グルメも楽しめるバーを設けている。

 演奏会やトークショー、特別商品の販売なども展開している。(広岡磨璃)