三菱UFJ銀行の早乙女(そうとめ)実副頭取(59)は神戸新聞社の取材に応じ、神戸でスタートアップ(新興企業)の創業につながる人材育成を支援する意向を明らかにした。神戸市に1千万円を寄付し、学生向けのワークショップや企業と連携した教育プログラムに役立ててもらう。4月に開設した新事業創出拠点「MUIC(ミューイック) Kobe」も活用し、世界で活躍する人材の輩出を促す。
神戸市が検討している、デジタルや人工知能(AI)分野などで活躍するグローバル人材を育てる学生向け事業を支援する。早乙女氏は「次世代に活躍する人材がうまく育てば、銀行にとっても将来に向けた好循環につながる」と期待する。
同行は2021年、大阪市に「MUIC Kansai」を設立。これまでに100件の実証実験を進め、高齢者向けリモート観光の動画配信サービスなど25件を実現させた。神戸では、MUICが持つ社会課題解決のノウハウを学生に提供し、より実践的にイノベーション(革新)につなげる能力を養いたいという。
早乙女氏は「神戸は産官学がそろい、まだまだ伸びしろがある」とする。若者の定着が課題とし、「革新的な起業や事業の創出都市になり、働く場として選ばれることが価値向上につながる。人材育成で貢献できる部分が大きい」と力を込めた。大阪の「MUIC Kansai」で繰り広げる大企業と新興との協業を、神戸でも始めたい考えだ。
9月2日には、大企業や自治体が新興企業に事業課題の解決策を募る「リバースピッチ」の関西最大級イベントを大阪・梅田で開く。両者をつなぐだけでなく、MUICが実証資金などを出す。「西から産業の新陳代謝を促し、日本経済の好循環を生み出したい」と話した。(横田良平)
【早乙女 実氏(そうとめ・みのる)】早稲田大政治経済学部卒。89年三和銀行(現三菱UFJ銀行)。執行役員法人企画部長や常務執行役員を経て、23年取締役副頭取執行役員。栃木県出身。