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サントリーマーメイド3号に乗り込む堀江謙一さん=2021年12月、新西宮ヨットハーバー(撮影・斎藤雅志)
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サントリーマーメイド3号に乗り込む堀江謙一さん=2021年12月、新西宮ヨットハーバー(撮影・斎藤雅志)
「サントリーマーメイド3号」の船内((C)Kenichi Horie)
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「サントリーマーメイド3号」の船内((C)Kenichi Horie)

 単独無寄港の太平洋横断に臨んでいる堀江謙一さん(83)。相棒のヨット「サントリーマーメイド3号」は60年前の名称を引き継ぐが、装備はまるで異なる。

 同船は大手飲料メーカー「サントリー」がスポンサーとなって製作した。全長約6メートル、幅約3メートル、重さ約990キロ。一般的なヨットと特別な違いはない。1月に、出発地の米サンフランシスコへと送り出された。どんな相棒なのだろう。詳しく聞くと、大海原での生活が垣間見えた。

 命名のきっかけは、協力してくれた企業のマークを帆に描いたこと。人魚の絵だった。「当時は意味を知らない人の方が多かったと思う。調べてみて『人魚なら、まあいいか』とマーメイドと名付けた」

 甲板から中に下りると、両脇にベッドが二つ。ヨットが風を右から受けたら右に、左から受けたら左に寝る。「そうするとバランスが取れるんです」。寝ない方は荷物置き場にする。

 奥に洋式トイレがある。かつては海に向けて用を足したり、バケツに入れて捨てたりしていた。トイレがある今は「海に落ちる心配がないから安心ですね」。

 洋上生活は長い。食事や洗濯はどうしているのか。

 「服も体も船も、全部一つの同じ洗剤で洗います。海を汚さない洗剤で、手間も省ける。その癖なのか、家でも頭と体は同じ洗剤で洗ってるんです」

 食事は基本1日2回。船内のガスコンロで調理するが、レトルトカレーが一番多い。「いろいろすると、めんどくさいわな」

 航海が安定している時はコロンブスやマゼランの航海日誌を読んだり、衛星電話で定期連絡を入れたり。メールの確認も。昼にコーヒーを飲むのが習慣だ。

 こうした暮らしはもちろん操縦と同時並行。気まぐれな風の向きと強さを考えながら帆を張り、舵(かじ)やロープを操る。昔は時間と太陽の位置で現在地を測る「六分儀」を使ったが、今は衛星利用測位システム(GPS)で航路を確かめる。島や他の船舶にも気を使う。

 数々の嵐にも遭った。暴風雨の中、体に命綱を巻き付けて甲板に出て、メインマストを畳み悪天候用の帆を張る。やることをやった後は祈る。

 話すうち、これまでの苦難を思い出すのか目の色が変わった。「船上では小さなけがもしないように気を付けている」。少しの打撲や切り傷が心身のダメージを広げ、航海に支障を及ぼす。

 工具も一式積んでいる。日々メンテナンスし、不具合が出れば修理する。体も船も自分でなおすしかない。

 再び温容に戻り「今回はヨット仲間に使い方を教えてもらったスマホも持って行くんです」。デジタル海図が入っているが、「太平洋のど真ん中でスマホが役立つか気になりますね」。

 同じことをした人がいるのかどうか。情報が少なすぎて、確かに気になる。

 一つ一つ尋ねていくと、改めて実感した。小さな船で進むのは約9千キロの太平洋。これは旅行ではない、冒険なのだ。(村上貴浩)

【連載一覧】
【上】チャレンジ精神マグマのよう
【下】海を切り開いた先達に今も憧れ

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