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東小雪さん(提供)
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東小雪さん(提供)

 多様な性への理解を考えるシリーズ「リカイってなに?」。今回は、元タカラジェンヌで自身をレズビアンと公表しているLGBTアクティビストの東小雪さん(37)=東京都=に聞きます。(聞き手・久保田麻依子)

■「LGBT」は理解への入り口

 -各方面の調査を見ると、多様な性に対しては若い世代ほど寛容な反応を示す傾向が見られる。

 「私はレズビアンを公表して10年以上前から講演活動をしているが、当時はLGBTの存在は全く知られていなかった。それからメディアが扱うことが増え、ものすごい勢いで認知度が上がった」

 「今やLGBTは学校の授業でも扱われ、大学入学共通テストや公認心理師試験にも出てくる。SNSでも同性カップルが日常の思いを投稿することが普通になっている。若い世代ほど当事者に接する機会が多いことも背景にあるようだ」

 -LGBTへの認知度は高まっても、カミングアウトできない人もいる。

 「私は宝塚歌劇を退団してすぐ22歳の時に親にカミングアウトした。病気療養中の父は理解を示そうとしたが、多くを語り合うことなく亡くなってしまった」

 「一方、母に打ち明けると、すごく残念そうにため息をつかれた。今思えば自分が知らないことや、習っていないことを一人娘から言われたら戸惑う気持ちは理解できるが、残念ながら断絶状態になってしまった」

 「その後、私は幸いにして周囲にカミングアウトできる環境にあった。しかし、例えば初対面の相手から過剰に性的な部分へ興味を向けられてしまうと、カミングアウトをためらう人も多いのではないかと思う」

 -東さんの今のパートナーは周囲にカミングアウトをしていないと聞いた。

 「今お付き合いしている人は『クローズ』(カミングアウトしていない人)で、普段から『職場にも親にも絶対言えない。墓場まで持っていく』と言っている。カミングアウトしないという選択、できない人の思いも一つの『人権』として捉え、見守っていかなければならないと思っている」

 -LGBTの当事者といっても多様性がある。

 「パートナーは(自身の性別が男女どちらにも属さない)『Xジェンダー』だ。レズビアンやゲイでもないから、私も理解しようとすればするほど、自身の中にも固定観念や思い込みがあると気付かされた」

 「最近では著名な歌手たちも特定の性や属性を明言せず『自分らしく変身する』と宣言していて、すてきだなと思った。LGBTという言葉は理解への入り口にすぎない。一人一人が違うという当たり前のことを、誰もが自信を持って言える社会であってほしい」

■まずは念頭に置いて

 -LGBTへの理解の深さは世代間で差がある。

 「日本は(男女格差を数値化した)『ジェンダーギャップ指数』が先進国で最低レベルにある。政治の場を見ると、極端に高齢男性の決定権が強い。性によって人の立ち位置に偏りが出がちな社会になっている」

 「とりわけ高齢世代は性の多様性への教育を受けてきていない。私は講演などを通じて脳科学的なアプローチや統計を使い、性が完全に『男』と『女』に二分されてはいないことを説明するようにしている」

 「LGBTの存在を、まだ受けられない人々がいるのも事実だ。ただ、そんな人にも『念頭に置いてほしい』と伝えている。それは差別的な行動や言動、態度は『ビジネスマナー』としても、決して取るべきではないということだ」

 -昨年12月には尼崎市保健所勤務の性的少数者(LGBT)の男性職員が、幹部から公務中のカミングアウトを控えるよう指導され退職した問題が発覚した。

 「当事者のことを思うと、大変ショックを持って受け止めた。特に尼崎市は性の多様性やLGBTへの理解を啓発するリーフレットを作成していると聞いた。LGBTという言葉は世間的には浸透したが、いざ身近な場面で直面したときには組織として適切な対応ができず、むしろ当事者が追い打ちをかけられてしまうということが表面化した」

 -職場として何ができたかという問題がある。

 「まず、カミングアウトは公務上にしても不適切には当たらない。元職員が窓口で性的指向を何度も尋ねられていたなら、それは『ソジハラ』(性的少数者らに対する差別的対応)に当たるので、私なら職員に助け船を出したいと思う」

 「たとえカミングアウトをしなくても、する必要があるものでもない。市民から配慮に欠けた質問をされていれば、周囲はフォローできなかったか。管理職が性自認への知識を持ち、当事者の心理的安全を守る意識があれば、今回の問題は起こりえなかったはずだ」

■カミングアウトは信頼の証し

 -尼崎の問題の反響では「身近な人にカミングアウトされたら戸惑うかもしれない」との声もあった。

 「最初にお伝えしたいのは『カミングアウトは信頼の証』ということ。当事者は『この人には言っても大丈夫。傷付けられない』ことを敏感に見極めている。つまり、あなたは信頼される人柄だということだ」

 「カミングアウトされた場面が職場、友人間、家族間で対応は異なるが、例えば子どもからカミングアウトされたら、その戸惑いは子どもに直接ぶつけないで、まずは話してくれたことに感謝を示してほしい。当事者家族の相談会や勉強会は各地にある。本人とは別の場で戸惑いを打ち明けてみてはどうだろう」

 -職場や学校で相談されたら?

 「生徒や部下に打ち明けられた時は、どんな困り事に直面しているか、どんな支援を求めているかを本人に聞いてほしい。『アウティング』(本人の了解を得ずに性的指向を他人に暴露すること)を未然に防ぐために『他に打ち明けた人はいますか?』などと、確認することも重要だ」

 -東京都渋谷区は2015年に全国で初めて「パートナーシップ制度」をスタート。東さんはレズビアンカップルとして元パートナーと認定第1号になった。

 「条例が可決した時に『やっと自分らしく暮らせる』と心の底から喜んだ。それまでは窓口に行くだけで緊張していたし、不動産屋で断られたりしたこともある。パートナーシップ証明書の存在が、家族として公的に認めてくれた」

 「東京都では本年度から、都全体を包括するパートナーシップ宣誓制度がスタートする。阪神間でも7市町が自治体の枠組みを超えて制度が使えるようになっている。こうした動きが全国に広がり、誰もが自分らしい生き方ができる社会に成熟していってほしいと願っている」

【ひがし・こゆき】1985年、石川県生まれ。元タカラジェンヌ、LGBTアクティビスト。東京ディズニーシーで初の同性結婚式を挙げ、2015年に日本初の同性パートナーシップ証明書を渋谷区で取得(17年に解消)。LGBT、女性の生き方、自殺対策などについて講演活動に取り組む。フォトジャーナリスト安田菜津紀さんとのユーチューブ番組「生きづらいあなたへ」などを配信している。

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