神戸・組長刺殺事件の構図
神戸・組長刺殺事件の構図

 2007年に神戸市で指定暴力団山口組系多三郎一家の後藤一男組長=当時(65)=が刺殺された事件で、組織犯罪処罰法違反(組織的殺人)の疑いで26日に逮捕された指定暴力団神戸山口組山健組系幹部の勢昇容疑者(76)=住所不詳=は、兵庫県警が現場指揮役とみて、09年から指名手配していた。

 県警葺合署捜査本部は、捜査過程で数十人を逮捕。殺人など事件に直結する容疑での逮捕は14人目となる。また県警は同日、勢容疑者の逃亡生活を助けた犯人隠避の疑いで、無職の中田智富容疑者(63)=京都府木津川市=も逮捕した。

 事件は分裂前の山口組で発生。これまでの公判によると、山健組(神戸市)にいた後藤組長は当時、山口組の中枢を直系団体の弘道会(名古屋市)出身者が占める状況に不満を抱き、山口組ナンバー2を公然と批判していた。そこで山健組の内部で後藤組長に制裁を加え、山口組への忠誠を示すために事件が計画された。山健組系組長が配下の組員らに殺害を指示した。

 勢容疑者の逮捕容疑は共謀して07年5月31日夕、神戸市中央区二宮町1の路上で、組織的に定められた任務に従って、後藤組長を刃物で刺殺した疑い。

 中田容疑者は今年9月26日、勢容疑者を同市東灘区のスーパーまで車で送って食料品の購入を補助し、潜伏先である同区内の建物まで送った疑いが持たれている。県警は2人の認否を明らかにしていない。

 県警暴力団対策課によると、中田容疑者が京都から神戸を訪れていることが分かり、行動を調べたところ勢容疑者の所在が判明。26日夜に東灘区の路上で逮捕した。18年間の逃亡を手助けした人物が他にもいるとみて、足取りを調べている。

 勢容疑者に殺害を指示したとされる山健組系組長は組織的殺人の疑いで逮捕・起訴され、一審の裁判員裁判では無罪となったが、控訴審で懲役20年の逆転有罪となり、15年に確定。すでに死亡している。

 山健組は15年に山口組を離れ、神戸山口組の結成を主導。だが神戸側は再び分裂し、21年には山健組の大半が山口組に復帰した。