地域で子育てする人たちを支援しようと、神戸市灘区のクリーニング店が、寄せられた古着の子ども服を洗濯し、店頭で無料配布している。経営者の中塚雅一(まさかず)さん(63)は「うちは町のクリーニング屋。『まちのタンス』と思って気兼ねなく手に取っていって」と話す。(谷口夏乃)
子ども服を無料で配るのは「中塚クリーニング ロイヤル ミヤビ」(神戸市灘区赤坂通6)。毎週日曜の店頭には、サイズが合わなくなったなどの理由で、地域の人に持ち込まれた子ども服が並ぶ。回収された古着は水洗いに加えて、抗菌処理も施す。衣類だけではなく、靴下や帽子、かばんなどの小物も豊富にそろえており、男女ともに80~160サイズまである。
利用者は自由に見て、気に入ったものを無料で持ち帰ることができる。子どもたちが健やかに育ってほしいとの願いから、「すくすく市」(午前11時~午後2時)と名付けた。
中塚さんが子育て支援に力を入れるのは、長男(28)の闘病がきっかけだった。一時は「生存率0パーセント」とまで言われた小児がんを2歳半で患い、一命をとりとめた経験をした。「(救われた)子どもの命は(ほかの)子どもに恩返ししよう」と、約20年前から国連児童基金(ユニセフ)への寄付も続けてきた。
転機は昨年、フェイスブックで古着を配る取り組みを知ったこと。自身の4人の子どもは、きょうだいでお下がりを着たり、近所から譲り受けたりしていたという。「今は少子化で、近所付き合いも減っている。集まった子ども服をクリーニングし、配ることで、子育ての助けになれば」と、取り組みを始めた。
すくすく市は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の活動にもつながる。持ち帰った人の中には、家にある着なくなった服を持参する人も。中塚さんは「衣類を循環させて資源の無駄を省くとともに、地域住民がつながる場になればうれしい」と話す。









