「人と関わることで狭い視野が広がり、作品も変わってきた」と話す夏きこさん=神戸市中央区
「人と関わることで狭い視野が広がり、作品も変わってきた」と話す夏きこさん=神戸市中央区

 かわいいのに、どこか不気味。そんなキャラクターのイラストを描いてきた、夏きこさん(34)=神戸市西区=が絵本「ミセスストゥープのゆうれい」を出版した。初のオリジナル絵本で、老夫婦の温かくも切ない物語が、黒インクの描線と透明水彩で鮮やかに展開していく。(仲井雅史)

 おじいさんは、おばあさんに先立たれて独り暮らし。実は、おばあさんは自宅で鉢植えの花となり、手助けできないことに気をもみながら、おじいさんを見守っていた。ある日、町でおじいさんが倒れ…。

 タイトルにある「ストゥープ」は夏さんのオリジナル・キャラクターで、英語で猫背の意。きょとんと目を見開いているが、感情は読み取れない不思議な存在だ。本作では、花になったおばあさんをストゥープとして表現した。

 原案は2016年、子育ての合間に独学でイラストを描いていたころに生まれた。ただ当時は画力不足を痛感しており、出版に際し大幅に手を入れた。

 これまで対面でリクエストに応じてイラストを描く企画などで腕を磨き、個性的な画風が評価されるように。21年には絵本「せんせいって」の絵を担当するなどし、新作出版のチャンスをつかんだ。「ストゥープさんが走り出し、追いかけていく」ような経験だったと振り返る。

 新作の無口なおじいさん、おせっかいなおばあさんは祖父母がモデルという。「ささいなことでも気持ちは直接伝えてほしい」。そんなメッセージも込めた。2人の秘めた気持ちは相手に届くのだろうか。最後に至るまで目が離せない。

 みらいパブリッシング刊。1540円。