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冬の木々の魅力を伝える福本市好さん(右)=神戸市立森林植物園
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冬の木々の魅力を伝える福本市好さん(右)=神戸市立森林植物園
カナクギノキは、とがった「葉芽」と丸い「花芽」を持つ=神戸市立森林植物園
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カナクギノキは、とがった「葉芽」と丸い「花芽」を持つ=神戸市立森林植物園
羊の顔に例えられる、オニグルミの葉痕=神戸市立森林植物園
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羊の顔に例えられる、オニグルミの葉痕=神戸市立森林植物園
むき出しで冬を越すアジサイの冬芽=神戸市立森林植物園
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むき出しで冬を越すアジサイの冬芽=神戸市立森林植物園
トチノキの冬芽はベタベタしている=神戸市立森林植物園
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トチノキの冬芽はベタベタしている=神戸市立森林植物園

 冬の森は、静かに見えてにぎやかだ。2月下旬、六甲山中にある神戸市立森林植物園(同市北区山田町上谷上)。勤続延べ約50年、森を知り尽くしたベテラン職員に、142・6ヘクタール、甲子園球場37個分の広大な園内を案内してもらった。花や葉が落ちた後の一見地味な木々の枝先では、個性豊かな冬芽(ふゆめ)たちが春を待っていた。(金 慶順)

■名物職員の人気講座

 「今日は春に備える営みを見学しましょう」

 日曜の午前10時半、兵庫県内や京都、大阪などから訪れた約30人を前に、名物職員の福本市好(いちよし)さん(71)が呼び掛けた。

 同県宍粟市山崎町出身。森に囲まれて育ち、地元の山崎高校林業科を卒業後、1969年に神戸市の技術職員として採用された。以来、須磨離宮公園に赴任した4年間を除き、約50年をこの植物園で過ごしてきた。

 月1回催される福本さんの自然観察講座は、1カ月前に予約受け付けが始まるとすぐに定員が埋まるという人気ぶりだ。参加者に配られた教材と観察カードは福本さんのお手製。ルーペを手に、いざ冬の森へ!

■冬芽を見つける

 6、7月には色とりどりのアジサイが出迎えてくれる「あじさい坂」。花も葉も落ちた焦げ茶色の低木が道の両側に並ぶ。福本さんがルーペを当てた枝先に、両手のひらを合わせたような、小さな冬芽があった。冬を越し、春に伸びて葉になる芽だ。

 標高400メートル台の山中に広がる同園は、街中より気温が2度ほど低い。この日の参加者はダウンやニット帽を着込んでいるが、冬芽も防寒するのだという。「寒さや乾燥に負けないよういろんな工夫がありますよ」と福本さん。

 ハクモクレンの冬芽は、「白い毛皮のコートを3枚ぐらい重ね着している」。けばだった数枚が脱ぎ捨てられた後、白い花が咲く。クスノキ科のカナクギノキは、中央にとがった「葉芽(はめ)」、その両側に丸い「花芽(はなめ)」を持つかわいい形。トチノキの冬芽は触れるとベタベタしていて、保湿効果があるという。

 葉が落ちた跡の「葉痕(ようこん)」もキャラ立ちしている。水や養分を送る「維管束」の配置が、不思議な模様を描き出す。オニグルミの葉痕はT字形で目鼻のように見えることから、羊の顔に例えられる。観察講座の人気者だ。

 「花や紅葉の時期だけでなく植物は常に何かの営みをしている。冬のたたずまいも見れば木々のことが分かりますよ」。正午すぎ、福本さんがそう告げて講座を締めくくった。

 同園の近くに住む女性(71)は、4年ほど前からほぼ毎回参加。「冬の街路樹を見る目が変わりました」とすっかり冬の森のとりこになっている。

■森を支える50人

 約1200種類(うち外国産500種類)の樹木が植わった森林植物園。だが江戸期から明治期にかけ、六甲山は乱伐のため、白い山肌が露出したはげ山だった。そこに木を植えて植物園として整備を始めたのは1940年のことだ。

 今、その木々を約50人の職員たちが育て、守る。枝切りや土壌整備をする「園地管理」班、定植前の苗を育てる「苗畑」班、園内のニホンカモシカや小動物を担当する「飼育」班、展示事務…。加えて障害者雇用を進める会社「いくせい」のメンバーが落ち葉の清掃などで日々園内を見回り、ボランティアも観察ツアーを催している。

 82年の歴史を持つ植物園。温暖化の影響か、木々がこれまでにない病気や虫害に見舞われることもあるという。苗畑では温度管理や水やりなどで手厚く育て、10年後、100年後を見越した森づくりに取り組んでいる。

 「ここで働くようになって、私も初めて冬が好きになりました」と岡本佳菜子副園長(37)。憩いの場であるだけでなく、植物園として、森づくりに励む。

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