神戸ハーバーランド(神戸市中央区)が10月1日、全面オープンから30年を迎える。官民一体で進めた街づくりは、目玉に据えた百貨店の撤退など逆風にもさらされたが、港町の新たな都市像を模索しながら歩みを重ねてきた。近年は若者向けの施設も充実し、市が推進するウオーターフロント再開発の対象にもなるなどかつてのにぎわい復活へ期待が高まる。(安福直剛)
■核店舗撤退、震災…苦難重ね 人気施設誘致で客層拡大
1982年、旧国鉄湊川貨物駅が役割を終えた。その跡地を中心とした約23ヘクタールを対象に、神戸市は総事業費約4千億円の大規模な再開発事業を計画。市の都心部で三宮(同市中央区)と並ぶ西の拠点と位置付け、大きな注目を集めた。
87年に市総合児童センターが先行して開館し、学校や住宅が次々と完成した。西武百貨店やデュオこうべもオープンし、92年9月の街開きセレモニー当日には、新しい街の姿を見ようと数千人が詰めかけた。
同年10月には阪急百貨店やモザイクも含めて全面オープンし、神戸新聞紙面では「まるでパビリオン」と表現し、当時の盛り上がりを伝えた。
しかし94年、西武百貨店が早くも業績不振を理由に閉店した。オープンわずか2年余りでの主力店の撤退は衝撃を与えた。
95年1月には阪神・淡路大震災が起きた。全店が大きな打撃を受けたものの、三宮に比べて建物被害は小さく、一時客足は戻った。
震災で三宮の社屋が全壊した神戸新聞社は96年、新しくできた神戸情報文化ビルに本社機能を移転した。
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21世紀に入り、市営地下鉄海岸線駅の開業(2001年)やエルビス・プレスリー像の移転設置(09年)など明るい話題もあったが、人出の戻りは鈍かった。
星電社やダイエー、ホテルニューオータニなど核となる店舗や施設は相次いで閉鎖。12年には阪急百貨店も撤退し、ある関係者は「とどめを刺された感じ。みんな暗い顔をしていた」と振り返る。
雰囲気をがらりと変えたのは、13年4月の「神戸アンパンマンこどもミュージアム&モール」の開業だ。
アクセスが悪いとされた神戸駅方面から道沿いにキャラクターのかわいい像やイラストが並び、親子連れが行列を作った。
訪れる客層も幅広くなった。同時期にオープンした商業施設「umie(ウミエ)」との相乗効果もあって一帯に活気が戻った。
近年は、大型・高層マンションの建設が続いた。神戸市はウオーターフロントの再開発に本腰を入れ、街の活性化に追い風になっている。
三宮と臨海部を周遊する連節バス「ポートループ」も21年4月、運行をスタート。市の担当者は「神戸臨海部の西の拠点としてハーバーランドが果たす役割は大きい」とし、さらなる集客力の向上が期待される。