8月上旬、神戸市西区の桜が丘中学校に通っていた卒業生5人が、母校の校舎裏に集まった。目的は、15年前に埋めたタイムカプセルの掘り起こし。当時の担任と合流し、旧交を温めつつ、硬い土にスコップを刺していく。だが、掘っても掘っても見つからない。果たして、その結末はー?(原ひより)

2011年10月。卒業を5カ月後に控えた桜が丘中3年3組の生徒40人が、大人になった自分に宛てて手紙を書いた。
発案は、担任の氏福裕介さん(44)。全員分をまとめてステンレス製の丸い弁当箱に詰め、約1週間後、校舎の裏手に埋めた。
当時、氏福さんは30歳間近。生徒が同じ年齢になる15年後に開封しようと約束した、いわゆるタイムカプセルだ。
この時、氏福さんは一人で穴を掘ったという。埋める段になって生徒数人を呼び、一緒に土をかぶせた。その上で「他のクラスメートにも場所を教えたらあかん」と厳命。目印を残さず、写真も撮らず、地図も作らなかった。
いたずらを恐れていたこともあったが、最大の理由は、大げさにしたくなかった、とのこと。だが、この徹底した保秘が、15年後、完全に裏目に出る。

「今、何してるん?」「先生、何歳になった?」
今年8月6日午後2時、氏福さんの呼びかけで桜が丘中に集まった当時の生徒が、懐かしそうに語らう。タイムカプセルを掘り起こす許可を学校側から得て、調整したこの日に都合がついた5人だ。
卒業後、頻繁に会っていたわけではない。思い出話で盛り上がりつつ、学校側が貸してくれたスコップをさっそく手に取った。
だが、5人のうち4人は埋める作業に携わっておらず、どこを掘ればいいか分からない。氏福さんが校舎の裏手に案内し、土に埋め込まれた鉄板を指した。
「この四角い鉄板の、四つ角のどっかにある」
発案者であり、一人で穴を掘った氏福さん自身が、正確な地点を忘れていた。埋めた弁当箱の色についても、「紺だったか、深緑だったか…」とあやふやな感じ。5人から「えー、先生、覚えてないん?」と失笑が漏れる。
取りあえず、氏福さんが「最有力」と主張する南東側の角の辺りを掘り始める。地面が硬い。つるはしも持ち出したが、1時間半をかけて達した深さは、30センチほどだった。

休憩時間に、作戦を練り直す。水をまいて地面を柔らかくし、鉄板の縁に沿って片っ端から掘っていくことにした。
すぐに見つかると思っていた5人は、軍手などを用意していなかった。看護師の白川敦基さん(30)の手のひらにはまめができ、つぶれた。それでも「手、痛いのもう超えた。まだいける」とつるはしを振るい続ける。4人が「男やなあ。漢字の『漢』のオトコ」とはやし立てる。
「そういえば」と小学校教員の中原麻里さん(29)が声を上げた。5人の中で、タイムカプセルを埋める作業に携わった唯一の生徒だ。
「石の下にあるはずや。(タイムカプセルの上に)大きい石、埋めてん」
氏福さんが覚えていない、重要なヒントが飛び出した。そこからは、石が出てくるたびに「これちゃうん!」と歓声が上がる。
だが、ことごとく外れ。午後5時まで粘ったが、結局掘り当てられなかった。

薄暗くなった校舎を、5人が名残惜しそうに去っていく。「絶対に掘り起こす」「次はしっかり準備したい」。そんな思いを受け止めた氏福さんは、再度、掘り起こしの機会を調整することにした。
現状の見通しでは、氏福さんの誕生日に合わせて10月末ごろを予定する。京都でタクシー運転手をしている筒井遥香さん(30)は「次は、先生がいい手だてを考えてくれるはず」と笑顔。学校側の許可が出れば、金属探知機や、掘削機を使う案も出ているという。
「埋めた自分たちが場所を分からんのに、誰かが持ち去るっていうのは考えにくい。今回はなめすぎてたんで、気合い入れて掘ります」
そう意気込む氏福さん。埋めた位置を覚えていないという致命的な落ち度については、あまり気にしていないようだ。

なぜなら、かつての教え子と会えたから。同じ学びやで過ごし、それぞれの進路を選んだ5人が、懐かしそうに旧交を温めているのを眺めているだけでうれしかった。
タイムカプセルについても、漁師の谷寛太さん(29)が覚えていてくれた。「みんな、忘れてたかもしれへんけど、掘り起こすの、ずっと楽しみにしててん」
納めた手紙について「何、書いたか覚えてへん」という声も。中原さんが「私、書いた内容覚えてるから、掘り起こしても確認するだけ」と笑う。
氏福さんは「掘り当てるのがベスト」としつつも、見つからなくても構わないという気持ちも芽生え始めているという。
「生徒たちと集まることができるいい機会やから。次の1回に力を入れて、それであかんかったら、掘り起こしを年中行事にしちゃうのもありだと思ってます」























