ひとはくでは、子どもと楽しめるイベントやセミナーがたくさんある
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■衛藤彬史研究員

 経済学の分野では、お金を対象に分析し、国内総生産(GDP)を指標に国の豊かさや経済力を求めることが多いですが、貨幣経済は実は人間の経済活動の一部でしかありません。例えば、友達と食べるケーキを作ることやDIYでの棚作り、病気の親の看病などは貨幣を介さず、価値のある活動であることに疑いはないですが、統計には表れません。

 米国の未来学者アルビン・トフラーはこれらを、多くの経済学者が見落としがちな隠れた経済活動として「生産消費活動」と呼びました。つまり、生産者でありながら消費者でもあるという「生産消費者(プロシューマー)」であり、そこに通貨の交換が発生しない経済活動のことです。そして、そうした活動は決して無視できるような量ではなく、生産性はこうした生産消費活動に決定的に依存していると説きます。

 国のトップや企業経営者に助言を求められることも多かったトフラーは、このことをあまり認識していない雇い主にこう問いかけます。「もし従業員が下(しも)のしつけを受けていなかったら、会社の生産性はどうなるだろうか」と。労働人口の世代交代を前提とした労働市場が、親たちによる無償の子育てに依存していることを直観的に示す例えで、「おまるテスト」と呼ばれています。

 私的な話題で恐縮ですが、今年になって2児の父親となりました。そして、日々このことを実感しています。子どもは24時間のべつまくなしにクレームを入れてくる取引先のようなものです。しかも対応は待ったなしで、そうでない時も、ちょっと目を離すと棚や机の上のものを落として割ったり、ティッシュや植木の中の土を遊んで散らかしたりと、非生産的な行動を繰り返します。

 わが子はかわいい、というだけではとても補いきれず、無償で、さらに言えばお金がかかるのに、資本主義社会と言われる中でもこうした営みが連綿と続いていることは不思議なほどです。

 国の生産性の低さやマイナス成長がたびたび指摘され、経済成長や抜本的な改革が叫ばれるなど、経済を取り巻くニュースは暗い話題ばかりですが、子育てのような簿外の経済活動が充実していれば、その実、国は豊かだし健全なのだろうと思うのです。

 そして私も、慣れないこともなるべく楽しみながら、周りにも助けられながら、これからも育児に取り組むことができれば幸せです。