根の付いた状態で掘り出した竹を運ぶ「蔵王松明講」の行者ら=三田市波豆川
根の付いた状態で掘り出した竹を運ぶ「蔵王松明講」の行者ら=三田市波豆川

 東大寺(奈良市)で3月1日から始まる「修二会(しゅにえ)」のたいまつに使う竹を奉納するため、三田市波豆川の住民らが地元の竹林からマダケを掘り起こした。「お水取り」の名で親しまれ、国宝・二月堂の欄干で約8メートルのたいまつが激しく火の粉を散らす様は春の訪れを告げる風物詩。波豆川の竹を奉納するのは昨年に続き2度目で、住民らは「1200年以上途絶えたことのない伝統の役に立てるのは、地域として光栄」と喜ぶ。(土井秀人)

住民ら掘り起こし奉納「地域に根付かせたい」

 修二会は東大寺の大仏が開眼した752年に始まった。「練行衆(れんぎょうしゅう)」と呼ばれる11人の僧侶が二月堂本尊の十一面観世音菩薩(ぼさつ)にざんげし、天下泰安や五穀豊穣(ほうじょう)などを願う。大仏殿が焼失した南都焼き打ち(1180年)や松永久秀による戦火(1567年)、二月堂の焼失(1667年)、第2次世界大戦など幾多の危機を越えて続けられており、「不退の行法」とも呼ばれる。

 3月1日から二月堂内で2週間にわたる本行があり、たいまつは毎夜、練行衆がお堂へ上がるための道明かりとしてたかれる。一人一人に付き添う「童子(どうじ)」が担ぎ、お堂の欄干でたいまつを付きだし、回転させ、駆け抜け、激しく火の粉を散らす。火の粉を浴びると無病息災がもたらされるといわれ、多くの参拝客が集まる。