■連携、協働で解決目指す
私たちが暮らす都市や地域にはさまざまな課題が存在します。それらを政策的に解決しようとするとき、私たちは政治という営みを避けて通ることはできません。政治に無関心な人はいても、政治に無関係な人はいません。
政治学において、政治の定義は「諸価値の権威的配分」や「誰が何を、いつ、どのように手に入れるか」と説明されてきました。しかし、こうした政治の定義と政策との関わりを理解することは簡単ではありません。
総合政策学部の講義「都市政策論」では、政治とは「社会に線を引き、秩序をつくる人間の営みである」と説明しています。
例えば、教室のスクリーンに、①無地のスライド②中央に1本の線③左の領域に「→」、右の領域に「↑」が投影される場面を想像してください=図。
これは道路を通行する自動車の流れをモデル化したものです。交通安全という秩序は、センターラインの引かれた道路を通行する人々が、ルールを作ることによって成り立っています。
こうした線引きは目に見えるものばかりではありません。日本には都道府県や市区町村が存在していますが、航空写真で国土を空から見ても、自治体の境界線は見えません。
これは、自治体と自治体を隔てる境界線が、国境線と同じように、政治的な決定に基づいて引かれていることを示しています。その線引きによって、住民や有権者を確定し、代表者を選出し、公共サービスを提供することが可能になっています。
政治は、異なる地域や組織をつなぐ機能も担っています。具体例として、橋の建設があります。川や海に架かる橋がなければ、人や物は船で移動しなければなりません。しかし、明石海峡大橋が本州と淡路島をつないでいるように、橋を架けることで異なる地域がつながり、陸路での移動が可能になります。交通インフラの整備は、政治に課された重要な役割です。
こうした考え方は、公共サービスを提供する組織について考える際にも重要です。私たちの暮らしは、さまざまな公共サービスによって支えられています。しかし、少子高齢化社会の中で、単一の自治体だけで全ての公共サービスを提供することは困難になっています。
そこで重要なのが、異なる立場の担い手による連携や協働です。自治体は、企業やNPOなどさまざまな民間組織と多様な場面で協働しています。他の自治体との広域的な連携も進めています。
もちろん、さまざまな組織による連携や協働は、相互調整や合意形成の困難を伴うことも少なくありません。それでも、課題の先送りという不作為に陥ることなく、解決を目指すために何ができるのか。この問いに答えるための教育研究を、総合政策学部では日々実践しています。
























