兵庫県から産出する化石の多くは、丹波竜のような巨大な恐竜ではなく、驚くほど小さな標本です。
指先ほどの骨や歯の中に、太古の生き物の姿や生態、進化に関する多くの情報が凝縮されています。私はそうした化石に向き合うたび、その小ささの奥に潜む科学的価値の大きさを実感します。
これらの化石は、発見された時点では岩石に埋もれており、そのままの状態では研究や展示に用いることができません。県立人と自然の博物館では、ひとはく恐竜ラボにおいて、長年の経験を積んだ技師とボランティアが、化石の周囲の岩石を慎重に取り除くクリーニング作業を行っています。
小型化石のクリーニングは特に難しく、力加減を誤れば、数千万年の時を経てようやく発見された標本が一瞬で失われてしまいます。そのため恐竜ラボでは、作業に用いる道具を自ら改良・開発しながら、技術を磨き続けてきました。
こうした長年の取り組みの積み重ねが、シャープペンシルの芯よりも細い骨をもつカエルの全身骨格化石などに代表される、これまでの驚異的な化石標本の研究成果発見につながっています。
一方で、これほど繊細な標本は、展示の面で大きな課題を抱えてきました。従来のシリコーンや石こうによる型取りは、標本に大きな負担を与え、破損の危険が高かったためです。その結果、来館者の方にお見せできるのは写真のみ、というケースも少なくありませんでした。
この状況を大きく変えたのが3Dプリントです。CT撮影などを通して、標本に直接触れることなく取得した3Dデータから、実物と同じ大きさ、同じ形の精密な複製を作ることができます。これにより、これまで展示すら難しかったもろい標本でも、誰もが手に取り、立体として理解できるようになりました。
また、研究室で得られた情報をそのまま展示室へと運ぶことができる点で、3Dプリントは単なる展示技術にとどまらず、研究成果を社会へ開くための強力な道具であると感じています。
恐竜ラボが培った高度なクリーニング技術と研究の蓄積、そして3Dプリントという新しい技術が出会うことで、ひとはくでしか見ることのできない、唯一無二の展示が可能になります。ぜひ展示室で、恐竜ラボの技術と3Dプリントが出会うことで広がった、新しい展示の世界を体感してください。























