■炎と水で刃物に魂
兵庫県相生市矢野町にある羅漢渓谷のせせらぎ脇に、水車が回る庵(いおり)が立つ。コン、コン、コン…。中から響く金属音が、周囲の新緑に吸い込まれていく。刀鍛冶・桔梗隼光(ききょうはやみつ)さん(48)の鍛刀場。人気漫画「鬼滅の刃」で主人公たちの刀の材料として登場する「玉鋼(たまはがね)」を使い、名刀を生み出している。
新型コロナウイルス禍前は、訪日客の姿も多かった観光地。現在は、密を避けて小刀づくり体験(約3時間)ができる。
最初の工程は火造(ひづく)り。鍛冶用の炉「火床(ほど)」で松炭を燃やし、鋼を熱する。真っ赤になった鋼に手鎚(づち)を振るい、小刀の形をつくる。両面に均等な力を加えるのが難しく、ねじれるが、桔梗さんが修正してくれた。
さらに、やすりをかけて小刀の形を整える。次の工程は「刃物に命を吹き込む」(桔梗さん)という焼き入れだ。
鞴(ふいご)の取っ手を押し引きして火床に風を送ると、青い炎が赤く爆(は)ぜる。炎の中で800度に熱した後、一気に水に浸すとジュッと音をたて、水蒸気が上がった。玉鋼を使うと日本刀のように刃紋が現れる。
「陶芸の焼き物のできあがりと同じように、浮かび上がる刃紋は一つ一つ違う」と話す。砥石(といし)などで、しっかり研いでできあがった。
日本刀づくりの見学(1万円)に加え、小刀づくり体験(4万円か8千円)ができる。開催は水、木、金、土曜日で、1週間前までに予約する。(段 貴則)
【行き方】山陽自動車道龍野西ICから車で20分。JR相生駅からタクシーで20分。神姫バスなら同駅から約10分乗車後、徒歩15分。
