紙芝居を読む岡本良子さん。このページには、自身が満州で負傷兵を慰問した場面を描いている=市川町屋形
紙芝居を読む岡本良子さん。このページには、自身が満州で負傷兵を慰問した場面を描いている=市川町屋形

 市川町屋形の岡本良子さん(88)が戦中・戦後に旧満州(中国東北部)で体験した日々を紙芝居にまとめ、語り継いでいる。題名は「ここに幸あり」。引き揚げの道中で幾度も命の危険にさらされながらも、家族そろって無事に古里へ帰り着けた幸せを描いた。「戦争によって命が奪われてはならない」。世界から争いがなくならない中、紙芝居をめくる手に力がこもる。(喜田美咲)

■お国のために

 「私の3歳の頃からのお話です。神崎郡川辺村という小さな田舎に住んでいました」。優しくゆっくりと語り始める。

 小柄だった父良男さんは徴兵検査で、体格や健康状態が兵役に適する「甲種」に合格できなかった。「お国を思う気持ちは誰にも負けない」と懇願し、陸軍の軍事郵便局で働くため1938年に満州の密山へ渡った。