世界遺産としての「価値」を守るため、周辺の景観はどうあるべきなのか-。2004年、世界遺産を持つ各国の都市はそんな問いを突き付けられた。
高さ157メートルの世界最大のゴシック様式建築、ドイツのケルン大聖堂が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「危機遺産リスト」に載ったためだ。
武力紛争や自然災害、都市開発などで、世界遺産の価値が損なわれる恐れがあるとユネスコが判断すればリストに登録される。ライン川沿いにそびえる大聖堂は、その対岸で高さ100メートルを超すビル数棟の建設が計画され、景観の悪化が懸念されていた。
「大聖堂は大きさ自体がキリスト教の偉大さを表している。周りに高いビルができれば、大きさを感じにくくなる」。NPO法人・世界遺産アカデミー主任研究員の宮沢光(49)はそう解説する。結局、開発計画は見直され、06年に大聖堂はリストから外れた。