事実上の破綻に追い込まれた分収造林事業=朝来市内(ひょうご農林機構提供)
事実上の破綻に追い込まれた分収造林事業=朝来市内(ひょうご農林機構提供)

 兵庫県の外郭団体「ひょうご農林機構」による分収造林事業が、1962(昭和37)年の植林開始から約60年を経て事実上の破綻に追い込まれた。民有地で木を育てて成長後に伐採し、売却益を土地所有者と分け合う仕組みだが、兵庫では木材価格の低迷で事業自体が成り立たなくなった。この間に積み重なった借金は682億円。同事業を巡る借金としては全国で最も多額だ。なぜ、ここまで膨らんだのか。

全国4位の事業面積

 分収造林事業は元々、国策として始まった。高度経済成長で需要が高まった住宅用建材の確保や森林保全が目的で、事業を担う林業公社が60年ごろから全国各地で設立された。植栽から伐採までにかかる期間は50~80年。この間の事業費は借金で賄い、売却が可能になればその利益で返済するスキームとなっている。

 兵庫県でも同機構の前身となる「兵庫みどり公社」が62年から植林に取り組み、99年までに但馬、西播磨地域の約2万ヘクタールに拡大。県によると、この造林面積は全国でも4番目に広い。

 他府県などに比べて多額の事業費が必要となり、みどり公社は73年から、それまでの農林漁業金融公庫(現日本政策金融公庫)に加えて民間銀行からも借り入れるようになった。当時の金利は今よりも高く、県の担当者は「利息を払おうにも、伐採が始まっていないため収入がない。利息を支払うために借金を重ねる状態だった」と話す。