神戸市垂水区の神戸徳洲会病院で患者が適切な治療を受けられず死亡した問題で、病院側の幹部が6月に開かれた有識者会議の終了後、報道陣に不適切な発言をしたとして、市が発言の撤回を申し入れていたことが23日、分かった。運営法人幹部が取材で、問題を招いた原因を問われ「根本的な原因はない」などと発言。改善計画書でうたう原因究明の姿勢と相いれないため市が抗議し、病院側は撤回して謝罪した。
有識者会議は、昨年から問題が相次いで発覚した同病院の改善計画を諮るために設置した。6月6日の初会合には医療法人徳洲会(大阪市)の福田貢副理事長や同病院長らが出席し、神戸市に提出した改善計画書の内容と進捗を説明した。
市などによると、会合後に行われた報道陣の取材に、福田副理事長は「(一連の問題には)根本原因がないと思っている。原因に迫ることは全て各論だろうと考える」などと発言した。
これに対し、市は問題の原因に組織ガバナンス(統治)の機能不全や医師数の不足などを挙げる。改善計画書には「根本的な原因を究明すべく調査を進めていく」と記されているが、副理事長の発言はこの方針と矛盾し、市は撤回を求める書面を6月25日付で病院側に手渡した。
病院側は7月1日付で法人理事長と副理事長名義で「大きな誤解を招いた」などと発言を撤回する文書を提出したという。
病院側はその後、市の指導を踏まえて改善計画書の内容を修正。根本的な原因として、市の指摘事項のほか、医師と職員間の力関係や平時の医療安全対策とPDCA(構想、実践、検証、改善)サイクルの不徹底など7項目を列挙。市は同8日付で修正版を受理した。
病院の担当者は神戸新聞の取材に「(副理事長の発言は)組織として間違いであると考えているので撤回した」と話した。
同病院ではカテーテル治療や検査の後に複数の患者が死亡し、糖尿病患者がインスリン投与を受けられずに死亡するなど問題が相次いだ。市は2月、医療法に基づく改善命令を行った。
(金 旻革)