兵庫県の斎藤元彦知事らが文書で告発された問題で、斎藤知事が30日付で失職し、出直し選挙に立候補する意向を固めたことが26日、県関係者への取材で分かった。県議会の不信任決議を受け、斎藤知事が県議会を解散するか、失職・辞職するかの判断が注目されていた。元西播磨県民局長が知事のパワハラ疑惑などを指摘した告発文書を作成し、問題が発覚してから約半年。知事選は11月にも行われる見通しで、斎藤知事の資質や県の対応が批判を浴びる中、混乱が続く県政の転換点となる。
斎藤知事は26日午後に記者会見し、正式に表明する。
県議会は19日、一連の文書問題で、行政の長として資質を欠いていると指摘し、全会一致で不信任決議案を可決。斎藤知事は10日以内に辞職か、議会を解散するか、どちらも選ばず30日付で自動失職するかの選択を迫られていた。
斎藤知事は不信任案に先立って、県議会の全86議員から辞職を求められたが、拒否。「私に至らない点はあるが、それでもなお県政を担わせてもらいたい」などと述べ、続投する意思を示していた。
しかし、7月以降、副知事、部長の辞職や体調不良が相次ぎ、最側近だった幹部が不在に。また、初当選した3年前の知事選で支援を受けた自民党、日本維新の会からも辞職を要求される事態となり、実効性ある県政運営は事実上、不可能な状態に陥っていた。
斎藤知事は法的拘束力がある県議会の不信任決議を受けた後、複数のテレビ番組に立て続けに出演し、「県政改革を進めたい」などと述べており、出直し選で活路を見いだす判断をしたとみられる。
一連の問題では、元西播磨県民局長の男性が3月、知事や幹部の疑惑を告発する文書を作り、報道機関などに送付。公益通報窓口にも通報したが、県は内部調査で男性を停職3カ月の懲戒処分とし、男性は7月に死亡した。自死とみられる。
県の内部調査の客観性が疑われるとして、県議会は調査特別委員会(百条委員会)を設置。これとは別に、外部の弁護士でつくる第三者委員会も発足し、文書に記された疑惑や、県が文書を公益通報とせず男性を保護しなかった対応も調査している。
(前川茂之、金 慶順)
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【告発文書問題】 兵庫県西播磨県民局長だった男性が3月、斎藤元彦知事のパワハラや企業からの贈答品の受領など7項目の疑惑を挙げた告発文書を作り関係者らに配った。4月に県の公益通報窓口にも通報したが、県は通報者への不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法の対象にならないと判断。内部調査を進めて誹謗(ひぼう)中傷と認定し、5月に停職3カ月の懲戒処分とした。これに対し調査の中立性を疑う声が噴出し、県議会が6月、調査特別委員会(百条委員会)を設置。男性は7月に証言予定だったが、同月7日に死亡した。片山安孝副知事が県政混乱を理由に辞職。斎藤知事は8月30日と9月6日、百条委に出席し疑惑について証言した。