焼け跡から見つかったこの骨は誰だろう。がれきの下で亡くなったこの人の最期はどうだったのか。阪神・淡路大震災では100日間で約5千人の検視が行われ、身元が確認されていった。業務にあたったのは200人を超える兵庫県警の警察官だ。私たちの取材は1冊の冊子から始まった。
「長田警察署 100日の記録」。震災の年の初夏、被害の大きかった神戸市長田区にある長田署が発行した。A4判327ページ。分厚い冊子の表紙をめくると、赤黒く染まる市街地の写真が載っている。1995年1月17日の朝7時前、署の6階から撮影されたものだ。
管内の被害状況、時系列に並んだ震災への対応記録の記載がある。最もページが割かれているのは、警察官の手記だ。がれきの下から声が聞こえる。見慣れたまちが炎にのまれていく。経験したことのない現場に向き合った署員らの心の内が明かされている。