阪神・淡路大震災では、警察官とともに多くの医師が検視に携わり、犠牲者の最期を証明する死体検案書を作成した。
神戸市中央区、大倉山公園のそばに神戸大大学院法医学研究科の研究室がある。上野易弘(やすひろ)客員教授(67)は、兵庫県監察医を務めて約40年のベテラン法医だ。阪神・淡路が起きたのは、まだ助教授に昇進したばかりのころだった。
発生から3、4日で、被害の大きかった神戸市兵庫区や東灘区で約400人の遺体を確認し検案書を書いた。「まだ若かったし、ここでうろたえると法医失格と、自分を奮い立たせていました」。できることを必死にやったが、半年ほどたったころ、上野さんたちの検案書は批判を浴びることになる。